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「さあ、たんと召し上がれ」
目の前に出された、なんとも豪華な食事。自分達の前に置かれた凄く美味しそうな食事にお腹が鳴ってしまったのはついさっきの話。
「…た、食べれない、」
食事が目の前に沢山あるのに食べれないのは、利き腕が棗くんと繋がってしまっているから。
「…うゔっ、な、棗くん、」
ダメだ、お腹が空いた。ここは恥ずかしさを忘れて、棗くんにお願いするしかない。
「棗くん、何でも良いからご飯取ってくれないかなっ」
「はあ?」
あたしの言葉を聞いて、そう言った棗くん。そりゃあ、棗くんは器用だからいいよね。
利き手の左手があたしと繋がっても、右手でさっきから器用に食べてるけどさ。もの凄く羨ましい。
「…うーっ、もう、限界で、」
「…。」
あたし朝から何も食べてないんだもん。それに器用じゃないから。だから食べれないんだもん。
ハアーッと溜息を吐いた棗くん。それでもあたしに食べ物を食べさせてくれる棗くんに涙が出そうになった。
「…あ、ありがとっ、」
まあ、可愛いとか、羨ましいわ、なんて声が隣でして、凄く恥ずかしかった。
「紅華の君。このお刺身、美味しいわよ」
「こっちのお肉も美味しくてよ」
「あ、あり、ありがとうございます…っ」
「紅蓮の君もどうぞ」
料理を持った花姫達が周りに次々とやって来てびっくりした。
「そういえば、若紫さんはエビが大好物だとか………
さあ、どうぞ。1人占めね!」
「カニとフグとハマグリも好きです」
蛍の所に蛍の好物であるエビが運ばれたのを見て、何か違和感があった。
蛍の周りに魚介類を持った花姫達が集まり、同じように流架にも料理が貢がれる。
あれ…棗くん、棗くん。
蜜柑の周りに食べ物が、ないよね?
「…何だよ、まだ何か食いてーの?」
「…え、えと、」
「食い意地張ってると太るぞ。これ以上丸くなったら雪だるまだな」
「なっ、酷い!棗くんの馬鹿!……あっ!」
「っ、」
棗くんの言葉に手を振り上げたら、あたしの手と棗くんの手が外れた。今ごろ外れた!お、遅すぎる!
余りにも食べない蜜柑に勘違いをした蛍が声をかける。
「蜜柑、食欲ないの?」
「え…あ、ちが…」
「まあ、それはお可哀想…」
「きっとお正月料理の食べ過ぎで胃が疲れてるのよ」
「この薬湯を飲んで、しばらく食べ物は口になさってはダメよ」
「さあさあ…」
「え…」
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未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時