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「まだ戒めが解けないのかしら…のう“紅蓮の君”」
どうしようと思いながら手を振ろうとした時、後ろから中等部校長の声がした。
あたし達の手を見ながら目を細めた姿に、背筋が凍ってしまった。
「“紅蓮の君”……確かに紅蓮の炎のような紅色の瞳。
ぴったりの花名ですわね」
棗くんの名前が決まった。凄く、凄く綺麗な名前。
「では、そちらの方は、黄金色の髪の…
まるで向日葵色ね…“向日葵の君”はどうかしら?」
「やだ、かわいい──♡」
「じゃあ、“向日葵ちゃん”で決定ね!」
流架の花名も決まった。
略して向日葵ちゃんって、それは少し可哀想。だなんて思ってたら中等部校長と目が合ってしまった。
「紅華の君、こちらへ」
「…へっ、」
あたしの方を見て、そう言った中等部校長。こ、こうかの君…?もしかしてあたしの事?
「紅華の君ですって!綺麗な紅い髪にはお似合いの花名ですわ」
しどろもどろしていたら棗くんが一歩前に出た。ああ、そうだった。棗くんと手が繋がってたんだった。
「…えと、その、」
「姫宮様、宴の準備が整いました」
中等部校長の方へ寄ろうとした時にそんな声がして、側へは行かなかった。
ただ、少しだけ、中等部校長の瞳が、あたしを見る瞳が気になってしまった。
「…どういう思考か、教えてもらいたいわ」
「教えて貰いたいのは私の方よ!ねえ姫様聞いて!」
「聞いて欲しいのはあたしの方や!
何で茜と仲良う、くっつかなあかんねん!」
「はあ?私だって、馨なんて御免よ。どうせなら違う奴が良かったわ!」
「……。姫宮さま…どうやら、巷で売られているもっちもっち粉のせいのようで、」
「……」
互いの手を繋いでいた紅蓮の君と紅華の君を見て、思い出してしまった。
……私の可愛い“花姫”達の事を。
「どうしよう……」
おねがいAちゃん…棗君を、棗君をとめて。
でないと、私……
おねがいAちゃん…おねがい…っ
のばら、のばら…
のばら…
どうしよう、棗君…
涼風達が楽しい時間を過ごしている時、一人何かを知るのばらは顔を青ざめさせていた。
あ…あの人…っ
ふと窓から外を眺めると見覚えのある人が見えて、携帯オペラグラスを覗いた。
クリスマスでAと行動していた翼だと気づいたのばらは急いで上着を取り、屋敷の外へ出た。
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未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時