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ふわふわ、心地いい。
「…おい、…おい、おきろ」
「…ん、もう少しだけ……、璃音くん、」
待って、まだ、もう少しだけ。もう少しだけ、このふわふわを味わっていたいの。
「…あ?璃音だ?…早く起きろ痴漢女」
ボヤーっとして、声が聞こえた途端に襲ってきたのは物凄い痛みだった。目を開けたら棗くんのドアップが目の前にあった。
「…ひぃっ!!!」
「……はなせよ、痴漢女」
離せと言った棗くん。あたしの手はしっかりガッチリと棗くんをホールドしていた。
寝ぼけてた頭が覚醒した。その日、朝から初等部の寮にあたしの悲鳴が響き渡った。
「ちがうっ、ちがうの…誤解なの…っ」
あの後、何故かあたしが棗くんを抱き締めて寝ていた、という形で皆に伝わった。
そのせいで朝から色々な方の視線を受ける事になった。鋭い表情のスミレちゃんと冷ややかな目の蛍が見つめてくる。
現場を見ていたカメが居る以上、否定しても意味がないというような表情で見つめてくる翼くん。
にやにやしてる心読みくんとキツネ目くん。皆にこんなに見れられて、もういっそのこと部屋の中に閉じ籠っていたい。
「Aちゃん!中等部校長からの贈り物届いてるよ!」
委員長の言葉でその場に向かった。箱を開けたら、凄く綺麗で煌びやかな振り袖がズラーッと並んでいた。
綺麗な帯や下駄、髪飾りまでもが準備されていた。振り袖に添えられた手紙を翼くんが読み上げる。
「何々?『この振袖を着て、ぜひ本日の新年会においで下さいませ。なお、昨日お受けした“事情”については、特例ということで同行の方々の参加も許可する事に致します』」
「棗…、」
手紙の内容に、流架は小さく名前を呼んだ。
「『ただし、
その場にいた全員が暫く呆然と立ち尽くし、その手紙の意味を考え込んだ。
「“女子として”って、どういう意味かな…?」
「女装して来いってことじゃないの?」
翼くんの言葉を聞いた途端に棗くんの手に力が篭った。痛い、痛いよ、棗くんっ。
「着物も女性用3着と袴が2着。それに小さい子供用の
もあるし、そういう事だね。
さて棗、流架。覚悟決めろ、な?」
「「……」」
棗くんと流架は顔を見合わせ、この袴を着るのかと凄い目で発言をした璃音くんを睨んでいる。
こればかりはどうする事も出来なくて、皆で一斉に着替える事になった。
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未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時