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「寝る時も壁越しにひっついてってのはひっぱられる力で寝苦しいと思うし」
「……、……」
声が出ないほどの衝撃ってのは、こういう時の為にあるんだと思う。
「まあ。責任上、オレらも泊まりこみで、いろいろ世話手伝うしー」
「“オレら”ってあたしもかよ…」
え。ちょ、ちょっと待って。
好きな人に見られる?トイレを、してる所を?
「……っ、………っっ」
ぃ…………イヤアアア────ッ!!
叫びたい気持ちを必死に我慢して、言葉を呑み込んだ。言葉なんて呑み込まなければ良かった。
「…な、棗くん、」
人間というものは、心に“トイレに行けない”という制限が加わると、何故かその途端にトイレに行きたくなってしまう生き物らしい。
「お願いっ!手を、手を、離して!!
うわあーっ!見ないで!あっち向いててええっっ!!」
棗くんが覗いてるだなんて事は絶対、絶対にないのに、こんなに近くて、しかもトイレが開いてるとなると気になってしまう。
「うっせえ!てめーが行きてーっつ──から付き合ってやってんだろ!!さっさとすませろっっ!!」
「ギャアアアァ────ッ!覗かないでって言ったのにぃぃぃ───!変態っ!痴漢!!人でなしー!!」
あたし、見られた、棗くんに、好きな人にガッツリ見られたあああ!!!
「ありゃ───…」
「棗君…」
「Aちゃんかわいそう…」
「あのAがあんなに叫んだのっていつぶりだ?」
「大嫌いな虫に追われた時以来…Aまじごめん…」
翼くんと美咲ちゃんの話なんて聞こえてないあたしは、トイレで棗くんの視線と格闘していた。
「いやあぁぁ!!あっち、あっち向いててえぇぇ!直ぐ終わるからっ!!ぎゃ───っ!!」
「ちったあ黙ってろ!!覗かれてーのかっ!!」
バタンって音がして、扉が全開になった。唖然。いや、もうフリーズした。
「…い、い、い、」
「…ああ?てめーがガバガバ飲み食いしてっから、こーなったんだろうが」
「いやああぁぁぁ────っっ!!!!
覗いた───っ!!棗くんの馬鹿───っ!!!」
あの後、トイレから出て直ぐにお茶を優雅に飲んでいる蛍と目が合って絶望した。
…な、何で。その余裕はどこから…?
同じ環境なのに、どうしてここまで違うの。
「よゆーだねー、蛍ちゃん組…」
「いや──…何か秘密兵器使ったみたいっすよ。蛍ねぇさんは…」
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未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時