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棗くんに年賀状を押し付けて、談話室に戻ったら誰もいなかった。
机の上には蛍から、“蜜柑を探しに行ってくるわ”という置き手紙があった。
「はあっ、はあっ、皆どこだろ…」
急いで外に向かったら、蜜柑の名前を呼んで探している皆がいた。
「出てったきり、もう2時間だよ。天気も悪くなるって予報で言ってたし…蜜柑ちゃんもしかして迷子になったんじゃあ…」
とても心配そうにしている委員長。流石にそれは…学園内で迷子はないと思うけど…
「もしかして、このまま家出かも…」
「ええっ!?」
「みんなに誕生日忘れられたと思い、傷心のまま、この寒空の下をさまよって…そして、そんな彼女を襲う不慮の事故…っ」
「ええっ!?み…蜜柑ちゃーん!!」
心読みくんの妄想話を信じたのだろう委員長だけが慌てながら蜜柑を探しているけど、返事はなかった。
「こんな事なら誕生日気づかないフリなんてしないで、普通にちゃんとお祝いしてあげたら良かった……」
「パーマがきついことばっか言うから…きっとそのせいで心、ズタボロで出てこれないんだよ」
「ちょっと!何、人のせいにしてんのよっ」
野乃子ちゃんやアンナちゃんも見つからない蜜柑に涙を溜めながら自分を責める。心読みくんは嘘泣きみたい。
「も──、めんどくさいわねっ!大体、みんなで誕生日気付かないふりして、サプライズパーティーなんて企むからややこしくなったのよ。誰よ、こんな企画たてたの!」
「……」
「「「「「(あ…)」」」」」
そこで一瞬、皆が無言になって蛍を見つめる。
「…しょうがないじゃない。
じらされる蜜柑を見るのって面白いんだもの」
だってかわいいじゃない。それも愛よ。何か文句ある?と言いたげに目を光らせる蛍にその場にいた全員が唖然として、誰一人反論できなかった。
向こうから涙を溜めた蜜柑と鳴海先生がやってきた。皆に囲まれて嬉しそうに笑ってる蜜柑。やっぱり蜜柑には笑顔が似合う。
「Aちゃん、明けましておめでとう!
年賀状ありがとうね♡」
少し離れた所から蜜柑達を見ていたあたしに話しかけて来てくれたのは鳴海先生だった。鳴海先生に会うの、
なんか久しぶりだな。
「鳴海先生、なんか、あったんですか?」
「…え?」
「…なんかスッキリした顔、してるからっ」
あたしのその言葉に、驚いたような顔をする鳴海先生。次の瞬間には元に戻ってたけど。
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未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時