447 ページ3
A達の問いに対して、翼は答えることはなかった。
「まあ、人にはいろんな事情があるんじゃないの?」
「蛍っ」
「(いつのまに………っ)」
突然、Aの隣から別の声がした。
声の主は、いつの間にかやって来た蛍だった。
「あんた達は仲良くしているんだし、それでいいんじゃない」
「そう、だよねっ」
「蛍、そーじ終わったん?」
「バイトにまかせたわ」
「やるな…」
仲良く手を繋いで離れて行く3人を見つめて翼は呟く。そして、蛍に感心するのだった。
一方その頃の教室では、棗は目の前にいる同じ危力系ののばらを冷たく眺めていた。
「…何で来たんだ、てめえ」
カゲに連れられて涙汲みながらも、能力別教室の大掃除に向かったA。
「…あいつに近づくなって言ったろ」
先ほどのあいつの笑顔を思い出す。
俺達が近づけば必然と目を付けられちまう。ただでさえ俺も璃音も、もう隠しきれてねえのに。
「さっさと帰れ」
この女までAの周りを彷徨く事になったら、もう庇いきれなくなっちまう。それだけは、ぜってー避けなきゃなんねえ。
「わ…私…棗くんにも用事があって……
あの、言わなきゃいけない事が…………」
絶対に傷つけないと、守ると決めたんだ。
「……っ…クリスマスパーティーの時…
私…ずっと…Aちゃんの事、見てたの…」
おずおずと話し始めたこいつの声に耳を傾ける。
声が小さくて聞こえにくいが、一応言葉を待った。
「最初から最後まで、高性能音声ききとりオペラグラスでパーティー中、ずっと、ずっとAちゃんの事見てたの…」
「…………」
のばらの話す事に興味なんてものは微塵も感じないが、それがあいつに関する事なら話は別だ。だが…
「………………………………」
何をみた、こいつ…
頭に浮かんだのは、あいつとの、Aとの、キスのことだった。
「そしたらダンスの途中、Aちゃん、踊ってた相手の人に仮面をはずされちゃって………」
あいつと、キスしてえ。
「その人…はっきりとは見えなかったんだけど、校長先生だったと思うの………」
Aの顔や言葉、表情を思い出していたのに、この女の言葉で俺の頭は真っ白になった。
「私…この事、棗くんには知らせておいた方がいいと思って…」
気をつけて、大切な何かを失わないように…
59人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未来(プロフ) - てあさん» 嬉しいお言葉、ご愛読いただきありがとうございます。 (2023年3月24日 22時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
てあ(プロフ) - すごく面白くて大好きです。 (2023年3月24日 3時) (レス) @page50 id: 0608e9eaca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:未来 | 作成日時:2023年1月11日 19時