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あれ?今棗くんが陽一くんに耳打ちした気がする。
「あ、言い忘れてたけど。
その子のアリスは“悪霊使い”で……遅かった」
たくさんの霊が出てきてギャ──ッ!と2人の叫び声が教室中に小玉した。こ、怖すぎ…。
棗くんにはやっぱり、逆らわない方がいいと確信した。蜜柑は悪霊から逃げ疲れて倒れていた。
「……あれ、」
ポンッと陽一くんの頭に手を乗せた棗くん。その表情は凄く優しいもので一瞬、ほんの一瞬だけ笑ってるように見えた。
「ねーちゃんっ…」
可笑しい事が起きた。可愛い声で呼んだ陽一くんの手があたしの方に伸びてる。
「…ねーちゃ…うたって、」
「…えっ、」
一瞬だけ。
陽一くんが言った言葉の意味が理解出来なかった。
「…ねーちゃの声、聞きたいっ、」
「……もしかしてあたしの歌、聞いた事あるの?」
陽一くんはコクリと頷いた。まだアリスの自覚もなくて寂しさを紛らわせたくて、歌ってた時期がある。近所に住む小さい子も入れて皆で一緒に歌う事があった。
もしかしてその中に陽一くんがいたの?
「…Aねえちゃ…うたって、」
やっぱり、そうだ。あたしの名前を知ってる。
「…あのね、陽一くん。歌うって約束するから、その…一緒にセントラルタウンに来て欲しいの…ダメかな?」
陽一くんは旗を見て、おねだりするような目で棗くんを見つめている。
「……いくっ」
「ありがとう…!陽一くん、大好きっ」
コクコクと頷いてくれた陽一くん。あまりにも嬉しくて抱きついてしまった。
…あたし何やってんの、本当に馬鹿。
陽一くんを抱っこしてたの、棗くんなのに。
「…っ…ご、ご、ごめんなさいっ。
ごめんなさい、本当に、ごめんなさい!」
急いで2人から離れて慌てて頭を下げた。自分の愚かさに泣きそうになる。
「…お前、謝りすぎだろ」
殴られても何されても仕方ない。だって棗くんはあたしの事が嫌いだから。そう思ってたのに頭上から聞こえた声は呆れたような馬鹿にしたような、優しい声だった。
「なあ、蛍!棗ってあんな顔も出来るんやな!」
「…あんな顔って?」
「あれや!Aを見てる時の棗の顔の事や!」
「そうね。写真も撮ったし、後で見てみましょ」
「えっ!?…ってそれAの写真!?」
「Aの笑顔って可愛いわよね」
─────Aの笑顔の写真が撮れる時って、必ず彼が側にいるのよね。
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未来(プロフ) - 唐瓜さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!私事ですが、更新が不定期になります。申し訳なく無いですが、これからもどうぞよろしくお願い致します。応援の言葉を糧に頑張ってまいります! (2020年6月6日 13時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
唐瓜(プロフ) - 面白くて大好きになりました!!これからも応援しています (2020年5月27日 23時) (レス) id: 3816d577a0 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - はるかさん» 楽しんでいただけているようで嬉しいです。これからも何卒、気長にお付き合いください^ ^ (2020年5月6日 14時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - 話読むごとに学園アリスのストーリー思い出して楽しませてもらいました…! (2020年5月6日 1時) (レス) id: 711d6ac2b7 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - はるかさん» 応援ありがとうございます!これからどんどん更新していくので宜しくお願い致します。 (2020年4月24日 14時) (レス) id: ff0bac3a56 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:未来 | 作成日時:2020年4月24日 1時