第10話 ページ10
「被害者...だと？」
「そうさ。僕はずっとアズサさんが好きだった。
最初に彼女の魅力に気づいたのは僕だ！
なのに先輩が僕のアズサさんを奪っていった...
二人の結婚式に僕がどんな気持ちで出たのか
君には分かるかい！？」
穏やかだった顔を一変させて
怒りに顔を歪ませる男。
「諦めようと思ったさ、何度もね！！
けど、先輩は交通事故で呆気なく逝ってしまった。
神様が哀れな僕にチャンスをくれた！
天啓を受けた僕は直ぐに
アズサさんの心の支えになれるように
声をかけて、傍にいて、
ようやく僕はアズサさんの隣を手に入れた！」
先程は打って変わって歓喜の声を上げていた男は
目を見開き、ギロリと宗介に目を向ける。
「けど、アズサさんはいつまで経っても
先輩を忘れなかった。
アズサさんの心は先輩に向けられたままだった。
そんな時に...僕は、
僕を見てくれる(人1)を見つけた。
可愛い(人1)...母親を安心させたいがために
仲良くなろうと僕と話す姿はとても健気だった」
男はうっとりするような顔をして続ける。
話す度にコロコロと変わる表情に
宗介は嫌悪感を抱く。
「アズサさんがいない時にだけ、
僕は(人1)に触れた。
母親にバレないように
必死に隠すその姿も愛らしかった。
涙を流すと揺れる青い瞳は海みたいでね。
そして_____」
「やめて」
宗介と男は背後から聞こえた声に振り返る。
男は声の主の姿を見ると嬉しそうに目を細める。
「アズサさん...！！」
「これ以上、山崎くんにその話をしないで」
車椅子に体を預け、顔色こそ悪いものの、
瞳は男に真っ直ぐ向けられていた。
男は(人1)の母親に走り寄ると
汚れるのを厭わずに、
地面に膝をついて顔を見つめる。
「ああ、こんなにも痩せて...
でも変わらず綺麗ですアズサさん」
恍惚とした笑みを浮かべる男を
冷ややかな目で見つめる(人1)の母親。
「...私が貴方の優しさに甘えていた。
オサムを失った寂しさに耐えられなかった。
全ては私の弱さが貴方を傷付けたわ」
「そうだ。僕は悪くない」
「けれど、私はどんな理由があっても、
娘を傷付けたあなたを許さない。
だからもう終わりにしましょう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 95人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
学(プロフ) - 柊さん» 柊さん。こんばんは。本作をご愛読して下さりありがとうございます。これからも頑張らせていただきますのでよろしくお願いします。 (2018年12月31日 18時) (
レス) id: 4147e5a7e7 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 小説読みました！！！ 面白かったです！更新頑張ってください！！ (2018年12月31日 0時) (レス) id: 9cb1ed3aee (このIDを非表示/違反報告)
学(プロフ) - あーさんさん» あーさん。コメントありがとうございました。更新はお時間頂きますがお待ちいただけたら幸いです。これからもよろしくお願いします。 (2018年12月24日 9時) (レス) id: 4147e5a7e7 (このIDを非表示/違反報告)
あーさん(プロフ) - 更新楽しみです (2018年12月2日 10時) (レス) id: cdc17806ee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：学 | 作成日時：2018年11月17日 5時
