第13話 ページ13
宗介は
診察室から戻ると辺りを見渡すが、
待合室に(人1)の姿はなかった。
(今日は早く面会できたのか)
そんなことを思いながら
待合室の椅子に腰掛ける。
しばらくして薬や診察券などを
受付で受け取ると
どうしたものかと立ち尽くす。
(さっきはよろしくとは言ったが、
時間もあるし、顔だけ出すか...)
病棟の方へ、その足を進めた。
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「おかしいな...」
病室に着くと名前プレートに
九条の名がついていなかった。
母親と初めて会って以降、
(人1)と病院で会う時は必ず病室に
顔を出すようにしていたから
部屋は間違えていないはずだ。
最近では個人情報の問題もあるから
その関係でプレートを外したのだろうと判断し、
ノックをする。
しかし、いつもの明るい返事はなく。
無音だけが宗介のノックに応える。
「...失礼します」
重い扉を開けるとそこには何も無かった。
暗い部屋。
カーテンは閉め切って、
整えられたベッドのみ残されていた。
喪失感が身体中を巡った。
「誰ですか?
そこはダメですよ...って
...(人1)ちゃんの彼氏さん?」
振り返るとそこには田中という看護師がいた。
否定することなど今はどうでも良くて、
口はすぐに開いた。
「あのっ...」
聞こうとしたが瞬時に理解する。
病人が部屋を移動することなんて滅多にない。
増してや、私物を全て片付けるなんて__________
「九条さんなら別室です」
「べっ...しつ...」
上手く言葉に出来なかったが、
看護師は宗介の聞きたいことを理解したのか、
そう口にした。
「九条さん、朝から容態が安定しなくて...
そしたらついさっき容態が急変してね。
今は集中治療室にいるわ」
「そう...ですか...」
それ以上言葉が見つからなかった。
「行ってあげて」
かけられた言葉に
いつの間にか俯いていた顔を上げる。
「きっと(人1)ちゃん独りで不安だから。
そばに居てあげて。
無理になにか言おうとしなくてもいいから、
そばに居るだけでも、支えになるから」
看護師の私だと、
今の(人1)ちゃんを不安にさせるだけだから。
お願い、出来ますか?
と付け足す。
その顔は歯痒そうで、彼女自身辛そうだった。
「(人1)はどこですか」
尋ねるのにそう時間は必要なかった。
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作者名:学 | 作成日時:2018年9月14日 5時