第12話 ページ12
「あれ?宗介くん?」
バス停につくと長身の彼が
一人ぽつんと立っているのに気づき、声をかける。
「よお」
「こんばんは、だね。
これから病院?」
「ああ」
「そっか...」
病院へ行く回数がだんだんと増えている気がする。
それが意味することは分かってしまう。
部活帰りの集団の中に
宗介の姿が見えないことを凛に尋ねたら
知らねえ。の一言だったことも多々あった。
(まだ、凛くんに言えてなんだ...)
このまま大会まで隠すつもりなのだろうか。
いや。もしかしたら
ずっと黙っているつもりなのかもしれない。
「今日も紅い色のやつか」
「え、あ、うん。
お母さん。
この前の気に行ってくれたみたいだから」
手元にある花を見ながら
そっと造花の花弁を撫でる。
プチッ_____
(あっ...)
そこまで力を入れていないにも関わらず、
一枚の花弁が千切れてしまった。
千切れた花弁をポケットにしまう。
「来たぞ」
宗介の言葉に顔を上げると
バスは既に扉を開いて待ち構えていた。
「う、うん」
(人1)は慌てて立ち上がると
バスに乗り込んだ。
_____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____
「それじゃあ、またね宗介くん」
「ああ。
おばさんによろしく言っておいてくれ」
診察室に入る宗介の姿を見送ってから
病棟に向かおうと
足の向きを変えるのとほぼ同時だった。
「いた!!(人1)ちゃん!!
来てたのね!!」
バタバタと騒がしい足音と共に
聞き慣れた声が耳に届く。
「あ、田中さん。こんばん_____」
振り返るとやはりそこには
看護師の田中さんがいた。
いつも笑みを浮かべる彼女が、
_____"顔を真っ青にして"そこにいた。
一瞬にして血の気が引くのが分かる。
田中さんは(人1)の両腕を掴み、
息を整えてから、
聞きたくないという私の意思を無視して
その言葉を口にした。
「お母さんの容態が急変して_____」
これが嘘であったのなら、
夢であってくれたのなら、
どれほど幸せなことであったか_____
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作者名:学 | 作成日時:2018年9月14日 5時