ゼラニウムの花言葉第二章 (ページ2)

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第2話ページ2

「鮫柄学園前_____」

私服に着替えた宗介はバスに乗り込む。

すると見知った顔を見つける。

相手も宗介に気づき、ぱあっと笑顔を向ける。

(そうか、今日は金曜日か。

毎回仕事のあとに病院に行ってたんだな)

拒む理由もなく宗介はその隣へ座る。

「こんにちは。あ、こんばんはかな？

部活お疲れ様」

「ああ。お前も病院か？」

「うん。お見舞い」

(人1)の膝上には小さな花を咲かせた

綺麗な植物が乗っていた。

丁寧にリボンで飾れたそれは

華やかな印象を覚える。

「初めて見た時と色が違うな」

「うん。時々変えてるの。

好きな花でも

変化があった方が飽きないかなって」

「母親の見舞いだったか」

「あの時のおばあちゃんとの会話、覚えてたんだ」

バスが動き出すと

またふわりと澄んだ香りがする。

(落ち着くな...この香り...)

宗介はバスに揺られながら

そんなふうに考えていた。

_____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____ _ _____

(人1)はふと肩に温もりを感じて横を見る。

すると宗介がこちらに少しもたれていた。

伏せられた瞼と

規則正しい静かな寝息から寝ていることが分かる。

日頃の学業や

厳しい部活のメニューをこなしていると

休んでいても自然に疲労が溜まっていたのだろう。

(人1)は小さく笑うと

その顔をのぞき込む。

穏やかに眠るその顔は

凛は仏頂面と言っていた。

しかし、宗介の行動や話し方は

所々に優しさがにじみでていた。

本来の彼はきっと優しく、

しかし、それを前面に出すのが苦手なのだろうと

すぐに察した。

今では隣で眠る彼を怖いと思っていない。

寧ろ_____

(少し可愛い...)

こんなことを本人に言ったら

不満そうに顔を顰めてしまうから

本人には黙っておくことにする。

後で凛くんにこっそり伝えよう。

そんなふうに考えていた。

カクンと下がる頭からふわりと塩素の香りがする。

鼻が覚えているその香りは自然と落ち着きを与える。

そっと毛先に触れると

少し傷んでいたが、

サラサラとした毛質は大型犬の物のようだった。

「ん」

優しい言葉が発せられる口が僅かに動く。

『次は_____〇〇駅。

〇〇駅_____』

最寄りの駅に着く車内アナウンスが流れたが

起こすのはバスが着いてからでも

遅くはないだろう。

もう少しだけこの穏やかな顔を眺めていたい。

そんな小さな欲に任せて(人1)は一人、

肩の温もりを感じていた。