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第四話 ページ4

勢いよく差し出されて、

わたしは反射でそれを受け取ってしまう。



「録音したのをそのまま取り込んだだけだから

普通に売ってるCDよりかは...まあ...

音が汚くなっちゃってるけど。

でもでも!めっちゃいい曲になったから!」



ちょっと照れくさそうに笑う空。

でも、その顔はずっと笑顔のままだ。



「空...これ......」


「あっーー!!もうこんな時間!?

あれ?今日何時からのコマ取ってたっけ???

遅刻したら当てられる!!」



キャビネットの上にある時計を見て、

初めて空のその顔から笑顔が消えた。


慌ててリュックサックのチャックを閉じて、

なぜかその場でバタバタと足踏みをし始める。



「ごめん!俺これから追加のええっと、

そう!お勉強!!

お勉強しなきゃいけないからもう行くね!

また来るから!!じゃ!!!」


病室へと入ってきた時と同じくらい早く

扉まで向かい、飛び出すように病室を出る。


騒々しかった病室が一気に静かになる。



「空...」



名前を呼ぶと再び勢いよく病室の扉が開かれて、

思わずびくりとしてしまう。

入口から空の笑顔だけが病室に入り込む。


「その曲!聴いてね!

今度はみんなと一緒に来て、感想聞くから!

じゃ!お邪魔しました〜!!」



ブンブンと手を振って大慌てで、

今度こそ病室を後にする空。


より静まり返る部屋で、

小さく笑いを堪える声が響く。



だってこのCDの中の曲がなんなのかの説明がない。

でも、どんなものかは私には分かる。

分かってしまう。


聴きたいと思う。

だって新曲なら記憶にも、経験にもない。

わたしの感情で、感性で聴くことができる。

それがあまりにも嬉しくて。

わたしだけの、想いを持つことができる。



でも、でもね。空。



「ふふっ...CDだけ渡されても...

再生機がないから聴けないよ」



握ったCDのクリアケースにぽたぽたと雫が落ちる。

笑ってしまう。

こんなにもかっこいいことをしてくれるのに、

こんなにも綺麗なオチがあるなんて。

空らしくて、笑ってしまう。


最後に笑ったのはいつなんだろう。

でも、少なくとも、最後に笑ったのは間違いなく、

"今、この瞬間"になった。

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作者名: | 作成日時:2020年7月11日 8時

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