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「…という事だ。こちらの条件はそれなりに良心的だと思うが、飲んでくれるよな?」
そう言って宝盗団の男は、タルタリヤを一瞥する。これ以上は譲歩しないとでも言いたげだ。
「あぁ、問題ないよ。それじゃあ早速指定した場所に運んでくれ」
タルタリヤも特に追求はせずに、取引を成立させた。
始終気を周囲に散らしていたAを見てタルタリヤは小さく息を吐きながら笑った。
「危険に巻き込まれるようなことはなかっただろ?任務は終わったし、戻るよ」
タルタリヤの声にAも意識を戻す。気付いたらタルタリヤの手がAの手を握っていた。
「ちゃんと一人で歩けるので離していただけますか?」
「えー?だってAちゃんずっと上の空なんだもん。ほんと、何か主張するなら、ちゃんと自分の行動を改めてから発言してほしいね」
「…」
一瞬だけ、それもそうかもしれないと思ってしまったことは秘密。
最終的にAはタルタリヤに手を引かれる形で任務から帰還することになった。
ふと、空を見上げる。雲が高く、心地よい風が吹いている。璃月の風も、モンドとは全く違うものだが案外心地が良いものなのだと思った。
しかし、急にタルタリヤが足を止める。その勢いに乗じてAの顔がタルタリヤの背中にぶつかった。「む゛っ」というなんとも言えない声を出したAは、ぶつけた鼻を押さえながら、タルタリヤを静かに睨む。だがAはタルタリヤの視線の先にいる人物に、目を見開いた。
「…なにかお探しかな?」
タルタリヤは不敵な笑みを浮かべながらその人物に問う。
そしてその人物は鼻で笑ってから、ゆっくりと視線をAに移した。
燃えるような、闇夜も照らしそうな程の紅の瞳で。
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作者名:ぽの | 作成日時:2022年2月2日 1時