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元々、Aと関わりをもつことはほとんど無いに等しかった。たまに野暮用で騎士団本部へと足を運んだ時に見かけるくらいだ。彼女は騎士団では無いが、ディルックより騎士団とは近しい存在で、よく依頼も引き受けているようだったため、ディルックが本部に来た時は大抵Aもいた。

彼女はよくモンドで噂されていた。エンジェルズシェアに来る客は、皆口を揃えて「彼女は才能の塊だ」 とかなり高い評価を下していた。

そしてもう一つ、客が口を揃えていう言葉があった。

「Aも仕事と結婚している」

A「も」というのは、ディルック自身も「仕事と結婚している」とよく言われているからだ。バーテンダーの仕事をしていると、客の何気ない会話から得られる情報は多くある。仕事と結婚しているなんて言われているが、Aに想いを寄せている男は少なくない。Aがその気になれば、結婚など容易く出来てしまうだろう。

無論、ディルックもその気になれば、という話も客の間でされていることは、ディルックは知るはずもない。

このように、ディルックがAについて情報を得る時はいつも人づてだった。ディルックにとってAは、少し有名なモンドの住民の一人であり、個人的に気になることもなければ、ましてやAとコンタクトを取ることなど考えてもいなかった。

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作者名:ぽの | 作成日時:2022年2月2日 1時

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