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あの後、璃月にあるファデュイの拠点へと戻ったAとタルタリヤ。
計画についての最終確認があるとのことで、夜が更けた頃、タルタリヤはAに呼び出されていた。
そういえば計画については何も知らなかったなと思い返すA。一応仕事みたいだし、真面目に話を聞くことにした。もしかしたら脱出に関する情報や、組織の穴が見つかるかもしれない。そんな淡い期待を胸に、Aはいかにも真面目な声色でタルタリヤに聞いた。
「今回の璃月での任務とは何か、今一度説明してもらえますか?」
「今回の任務は、宝盗団を利用した物資調達だよ。比較的簡単な任務だ。」
「…一般人に被害は及びませんよね?」
簡単な内容の任務といえど、それが明らかに悪意のあるものであれば、Aは止める必要があると考えていた。タルタリヤを冷たい目で見つめながら、静かな声で彼に聞いた。
「俺たちのことなんだと思ってるの?そんなことはしないよ。抵抗しなければ…ね?」
一気にAの敵意や殺意が増幅したのがわかった。タルタリヤはそれをむしろ楽しむために、あえて煮え切らない返事をしたのだ。そちらのAの方がよほど人間らしく、退屈しないから。
「私は一応、あなたたちの組織メンバーですが、そのようなことがあれば、止めにかかります」
だがAはそんなタルタリヤの意図はつゆ知らず、本気でタルタリヤの発言に反論していた。
「別にいいけど、後で怒られても知らないよ?」
「関係のない人を見殺しにしてしまうくらいなら、それくらいなんでもないです」
Aと目が合う。その瞳の奥には普段のAからは見られない揺るぎない小さな炎のようなものが見えた気がした。
タルタリヤはそれに気付かないふりをした。一瞬だけ流れる静寂。タルタリヤは何事もなかったかのようにわざとらしくAに笑顔を向けた。
「はは。嘘だよ。俺たちだって、人殺しなんてできればしたくないさ。」
Aは今だにタルタリヤをじっと見つめていた。だが、タルタリヤは気にしていないようだった。
「…嘘かどうかは自分の目で見て判断します」
「そうするといい」
ようやくAの視線がずれる。「失礼しました」という声とともに、今度こそ長い静寂が訪れた。
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作者名:ぽの | 作成日時:2022年2月2日 1時