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モンドに優しい風が吹く。
蒲公英が舞い、日の光が街を温かく照らす 。
そんな日に、彼女は生まれた。

夫妻はこの子がいつまでも幸せにあるようにと、そしてモンドに吹く風が、いつまでも温かく優しいままであるようにと願った。


あれから風は穏やかながらも驚くほどに時間を進めた。
彼女は両親からの愛を目一杯受けながら、優しく清らかに育った。

「じゃあ、行ってきます」

両親にそう一声かけて、Aは扉を開ける。「いってらっしゃい」という両親の声を背に、少し胸を張って歩き出した。
モンドは今日も温かく、Aの心を穏やかにする。

「今日もいい天気だな。…頑張ろう」

そう小さくつぶやいて気合を入れた。

「やあ、A。今日もヒルチャール狩りを頑張るのか?」

「ガイアさん…お、おはようございます」

どうやらガイアにはその独り言も聞こえていたらしい。少し恥ずかしがるAを見て、「今日も相変わらずかわいいな」と、ガイアは笑いながら言った。

「はぁ…今日も相変わらずよく口が回りますね」

「ははっ。本心さ」

「そういうことにしておきます」

軽く談笑しながら、二人はまた歩き出す。

「最近、ヒルチャールだけではなく、ファデュイがうろついているという情報が入った。Aも気をつけてくれ」

「わざわざ心配ありがとうございます。モンドを危険に及ぼすようなことはしません」

Aは武器である片手剣に軽く触れながら静かに言った。
そんな様子を見てガイアは「だから心配なんだよな…」と小さく呟いた。

「?何か言いましたか?」

「いいや、なんでもないさ」

そう言ってガイアはAの肩を軽く叩いて騎士団本部の方へ向かった。
Aもモンド城の門へ足を向ける。その時に頬を撫でた風が少しだけ、嫌な冷たさを感じさせたのは気のせいだと思うことにした。

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作者名:ぽの | 作成日時:2022年2月2日 1時

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