親愛なる貴方へ愛憎渦巻く紅炎を=3 (ページ23)

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職場体験スタートページ23

『さてさて、これから数十分間の新幹線の旅の旅〜』

「楽しそうだな」

『当然でしょ！だって……まあ、その。というか焦凍もいるのすごく意外』

席に焦凍と対面して座る。浮き足立っているのがバレて、少々居心地が悪くなった。窓の方を向き、話題を無理やり変えて誤魔化す。

「俺もAがいるとは思わなかった」

『……これが父親の職場なら行かなかったけど。No.2ヒーローに学びに行く、だからね』

No.2なんて地位にいるのに必要なのは強個性だけじゃない。戦略、視野、判断力、状況認識力、学ぶことは多い。

それに、あの人が綺麗に終わらせてくれなかったせいで、まだ心の底で未練が燻ってるんだ。それをどうするかも、今回の体験で決めたい。

着くまでの時間は、焦凍と話しているとあっという間だった。

＊＊＊

エンデヴァーヒーロー事務所。

『おー！さすが！写真で見るよりも大きいね！』

「どうでもいい、行くぞ」

ウキウキして事務所に入ったが、すぐにしぼむ。そこにあったのは、歓迎したのは“父親”の顔で落胆する。

しかし、いつまでもそうではなく。コスチュームに着替えるや否や、間髪入れずに指示を飛ばしてきた。

どうやら今日から出張するらしい。行先は保須市。世間を騒がせているヒーロー殺し“ステイン”を捕まえるため、潜伏している可能性が高い保須市の警備に当たるそうだ。

これまでのステインの犯行から、まだ保須に留まっているであろうと見抜いた判断力。

初めて来たヒヨっ子ですら役立てるその的確かつ迅速な指揮能力。

改めて、この人も化け物だと思う。

頬をパチンと叩く。

しっかりしろ、理想のヒーロー像のない私は、コレを当面の目標に定めたんだろ。

＊＊＊

東京都保須市の昼下がり。通りは会社へ戻るサラリーマンや、買い物に向かう主婦、散歩に出かけるお年寄り達で賑わっている。

誰もが、平穏な毎日を送っている。

……この町に凶悪ヴィランが潜んでいるなんて、信じられないくらいに。

エンデヴァーの後ろについて見回りに出る。

突然、焦凍がスマホを取り出した。職場体験中なのに、と呆れる。が、焦凍が切羽詰まった様子で話しかけてきた。

「緑谷からの一斉送信だ、位置情報だけ送られてきた！」

デクから！？これは保須の……まさか

『デクは、意味無くこんなことする奴じゃないよ』

焦凍と頷き合うと、

『江向通り4-2-10の細道。そっちが済むか手の空いたプロがいたら応援お願いします』

「おまえならすぐ解決できんだろ。友達がピンチかもしれねぇ」

そう言い残して、指定された場所へと駆け出した。