話そう ページ20
「だから、1番好きな食べ物」
私の戸惑いに、気づいてないのか、質問を続ける焦凍。
『……チョコレート、カカオ70%が好き』
「苦ぇな……俺は苦手だ。なら2番目は？」
『……光己さんの唐揚げと、麻婆豆腐』
「あぁ、確かにアレは美味かった……3番目は？」
『……アイスクリーム』
「それなら種類豊富だな、それにしよう」
こいつ、会話を自己完結させてやがる。私には話がまったく見えない。どうしていきなり私の好きな食べ物の話をするんだ。
「約束しただろ。お礼に奢るって」
絶句。何だよ、どんなお気楽な思考したらそうなるんだ。
『私、言ったよなぁ……お前の顔なんて！見たくないって！お前なんか大っ嫌いなんだよ！！』
ガタリと勢いよく立ち上がってまくし立てる。すると、焦凍も負けじと立ち上がった。
「あぁ！でも俺は納得してねぇ！突然お前が豹変したんだろ！」
お互いに息を荒げて怒鳴りあった。数秒間睨み合う。先に頭を冷やしたのは焦凍だった。ため息をつきつつまた座った。私もそれに習う。
「……こうやって、すぐにお互い怒鳴るから、話が拗れんだ。A、話そう。俺達に必要なものだ」
『俺達じゃなくて、焦凍が欲してるんだろ。昨日言った通りだ。私に話す事なんて何も無い』
「っなら何で家に入れた！俺をもてなした！そのつもりなら初めから突き放せよ！！っ期待、させるんじゃねぇよ」
『てめぇ……どの口がそれを！先に突き放したのは自分だろうが！おそろい！？よく言うよ、
「！お前、その話聞いて」
ほら、やっぱりそうじゃないか。不要と断じたのは、先に捨てたのはお前だ。
驚きに満ちた顔、見れば見るほど私と似てないことが分かる。唯一の共通点の瞳の色も、もう変わってしまって戻らない。同じだったのは左半分だけ。でもそれは、
『もう、放っといてよ……こんな話、辛いだけだ。中途半端に優しくしないでよ』
顔を手で覆い隠す。これ以上話して何になるんだよ。何も生まれない。……疲れた。
「やっと、納得できた……」
そうかよ、ならこれで終わりだな。何もかも。今までと同じだ、ただのクラスメイトに戻るだけ。私も、もう突っかかったりしないし、平穏な生活を送ってよ。
……涙腺、耐えろ。もう少しだから。あとちょっとで終わるから。だから昨日の思い出よ、もうよぎらないでくれ。
もう帰ろうと立ち上がった。
でも、動けなかった。
目の前から伸びてきた暖かさと冷たさに包まれたからだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 157人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なおみ(プロフ) - 更新気長に待ってます！頑張ってください！ (2022年3月16日 0時) (
レス) @page26 id: 4f9348325b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：椿油 | 作成日時：2021年3月26日 23時
