親愛なる貴方へ愛憎渦巻く紅炎を=3 (ページ19)

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もう、無理だよページ19

「俺の左は、Aとおそろいの炎(・・・・・・)だからな」

優しい顔で、鼻歌でも歌うような軽やかさで、焦凍は呟いた。

『は……？』

衝撃で、注いでいたお茶を手にかけてしまった。

「手が……！火傷しただろ、すぐ氷で冷や」

『覚えて、たのか』

「おそろいの炎か？ああ、小さい時話しただろ。忘れたことは無い。いいから、早く手当てを」

頭に血が上る。信じられない。覚えていたのにアレか。

『帰れ』

「A……？」

『帰れ！早く出てけよ！もうお前の顔なんて見たくない！』

焦凍を突き飛ばす。そのまま外へと追い立てる。

『覚えていたくせに！何なんだよお前っ！最っ低なクソ野郎だな！焦凍！！もう、二度と来るな……っ！』

勢いよく扉を閉めて、聞こえるように鍵をかけた。ズルズルと扉にもたれて、座り込む。

まだドア越しに、焦凍の声が聞こえる。ガチャガチャとノブを回している。

焦凍が諦めて居なくなるまで私は、耳を塞いで、そこから1歩も動けなかった。

『焦凍のバカ……大っ嫌いだ』

これならあの幸せな時間も全部夢なら良かった。

しかしそうではないと、全て現実だと、ジクジクと痛む火傷が教えていた。

＊＊＊

「おはようA、なぁ昨日は」

『ああおはよ。よぉ峰田元気か？おはよー！』

「Aが、オイラに挨拶……！？熱でもあんのかよ！」

私は、焦凍を避けることにした。

「っA」
『瀬呂マジかよどんまいコールって！ハハハ！』

朝は集団に混じり、休み時間の度に廊下に出て校内を探検。昼は真っ先に食堂へ行き、隙を与えなかった。

でもやり過ぎた。ここまで徹底的にやれば周りも勘づく。

放課後。

「A、ちょっといいか」

『よくない、これから透とスタア行く約束してるから』

「私待ってるからいいよ」

『っ、いやでも先約は透だし』

「嫌がってるなら私も庇うよ。でも、気づいてる？今日のAちゃん、ずっと悲しそうな顔してる。轟くんを避けた後は特にそう。

ねぇAちゃん、言わなきゃ、伝わらないよ？」

何も言い返せなかった。私が俯いて自分の席にへたり込むと、焦凍は障子の椅子を借りて座った。

透は教室後方、お茶子達と合流してた。

A、透、恨む。しばらく、口、きかない。
……数十分くらいで、やめるけど。

私が現実逃避してる間に、考えがまとまったのか、焦凍が口を開いた。

「Aの、好きな食べ物ってなんだ？」

『…………はい？』

思わずポカンと呆けて、焦凍を見つめた。