親愛なる貴方へ愛憎渦巻く紅炎を=3 (ページ18)

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私の味、轟家の味ページ18

「美味い」

『でしょうね、私が作ったんだから』

私にとっての朝ごはん。焦凍にとっての昼ごはん。
そばと煮物と、最高の唐揚げ。

『というか、本当にいいそば持ってきてくれたんだね』

「そうなのか？いつも家で使ってるそばなんだが……いつもと違う味がする」

返答に困る。当然のことだ、私は轟家での作り方を教わっていないのだから。

私の料理は、ほとんど美幸さんと光己さんの味だ。2人が仕事でいない日は、爆豪家に預けられてたから。

轟家の味なんて、とっくの昔に忘れてしまった。

「だけどこの味もいいな。これがAの味なんだな」

……久しぶりに、焦凍の笑顔を見た。私がずっとデクに重ねてた、大好きだった顔。まるで春がほころぶような優しい笑顔。

『そう言って貰えて嬉しいよ、ありがとう』

つられて私もクスリと笑う。

焦凍が訪ねてきた時は、まさかここまで暖かい気持ちになるなんて思いもしなかった。
もう少しこの時間が続いてもいいかな、なんて思い始めてる。

「ごちそうさま。本当に美味しかった。礼がしてぇ」

『このそば、焦凍が持ってきてくれた物なんだけどね、ふふ。んー、ならさ、今度何か美味しいもの奢ってよ』

「分かった。約束する」

膳を下げるために立ち上がり台所へ。
食器を流しに置くと、食後に果物でもと、新しいお皿に手を伸ばした。

「そういえば、午後に母さんの病院に行こうと思ってるんだが、一緒にどうだ？その帰りにでもどこかに寄って」

パリン!と耳に痛い音が届いた。盛り付けにピッタリだと選んだお皿が足元で割れていた。

「A！？怪我してないか？」

駆けつけた焦凍が背中をさする。

『大……丈夫』

「その、無理しなくていい。昨日きっかけをもらわなかったら俺も行こうと思わな」

『気にしないで……本当に、大丈夫だから。でも、病院へは1人で行って。私には無理』

震える手で破片を集める。せっかくいい雰囲気だったのに、私のせいで台無しだ。

「……温かいお茶でも飲んで一息つこう、お湯沸かすから少し待ってろ。鍋かやかんは……」

『お茶は入れられんのかい。でも道具使わなくても』

この家では大量に必要なら他家と同じく鍋で沸かすが、少量ならコップに水を入れて、

『個性の応用だよ、手のひらに適度な温度の炎を出して……ほら沸いた。これを急須に注げば完成。さ、持っていこ』

「上手いな」

『焦凍が下手なんだよ。炎の使い方に無駄が多い』

少しムスッとした後、焦凍は、

「俺だってすぐに上達する。俺の左は」