不屈の羽番外編【ゴールデンカムイ】ニ (ページ37)

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番外編47話　笑み（3）ページ37

月島「【不屈の松崎】・・・・」

　「貴方だけは諦めず、挫けないでください」

　「俺には難しかったことも貴方なら出来るでしょう？」

　「俺は【あの子】に何も出来なかった」

【あの子】が俺に背を向けている。

癖毛を風にたなびかせながら。

月島「やり残したことがあるのなら。
今のうちですよ」

　「何かしてあげたかったと思ってからでは・・・遅い」

A『ひとつだけわかっていることがあります』

松崎少尉が指輪をポケットにしまい、俺を見つめた。

A『手放したモノが大きいとか小さいとかは関係ない』

　『大事なのは自分がどうしていたかということ』

自分がどうしていたか？？

A『俺は・・・今ここにいることに後悔はありません』

　『やり直しがきくとなっても・・・同じ選択をする』

　『【この手で沢山の人を救ってほしい】と、彼女が俺に話していた』

　『一人の少女を救えない奴が、ここで諦めたらそんなこと出来るわけないでしょう？』

松崎少尉が前を見据える。

その瞳は、力強く蒼く光っていた。

A『月島軍曹が捨ててしまった大切なモノの姿は・・・どんな感じですか』

　『辛い悲しい思い出ばかりじゃないでしょう？』

あの子が、こちらを振り返った。

目があった。

色あせた思い出が、視界に飛び込む。

波の音が、優しく耳を通り過ぎていった。

あの子の口角が、上がり、目を細めた。

月島「笑っている」

そうだ。

記憶の中での【あの子】は、いつも笑っていた。

月島「・・・・・・・少なくとも、悲しいことばかりでは無かったかと」

松崎少尉が『でしょ』と笑うと軍帽の位置を直した。

A『【大切な人】と口にしたその時から、
軍曹は彼女の為に動けていたと俺は思います』

　『なんせ面倒見の鬼ですからね』

―俺を名前で呼んでくれるおめが好きらすけ。

その髪も俺にとってはいとしげら―

―だすけん。基ちゃんはみんなに嫌われたっちゃね―

嫌われても、あの子が笑えているならそれで良かった。

月島「上手くいってたときもあったなら・・・それで、良かったです」

いつの間にか、あの子の姿がなくなっていた。

A『やかましいのであの馬鹿二人を黙らせてきましょう』

松崎少尉が杉元と鯉登少尉の方に歩いていく。

月島「そうですね・・・鯉登少尉ッ杉元ッ」

直向きに信じられる何かを、俺も見つけよう。

まずは、そこからだ。