不屈の羽番外編【ゴールデンカムイ】ニ (ページ32)

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番外編46話　キロランケの葛藤（2）ページ32

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キロランケ「・・・・分かった。
降参だ松崎」

A『・・・・・・・』

キロランケ「知ってることはすべて話してやる。だから離してくれないか？」

A『離したらテメエが何するかわからねえ』

キロランケ「・・・・・息が苦しくて、このままだと死んでしまうっ・・・」

松崎は俺をジッと見下ろすと手の力を緩めた。

チャンスは、ここしか無い。

キロランケ「・・・・・ッらあ！！」

俺は松崎に飛びかかった。

右足の骨と腱を斬られていた松崎は、俺に襲いかかられるとあっという間に体制を崩した。

あとは、簡単だった。

アイツの傷口に爪を立て、失血での気絶を図った。

だが、松崎は意地でも意識を保とうとした。

近くに銃剣が落ちているのを見つけた。

これしか無いと思った。

キロランケ「・・・ッ！！」

A『ゔッ』

ズブリと筋肉を突き破り、銃剣の先が臓器にまで達したという感触が確かにあった。

苦痛に顔を歪めつつも、青黒い瞳は俺を睨めつけている。

ウイルクがこの青年の何を見ていたのか、
漠然と理解した気がした。

A『・・・ｯ・・・ゔぅゔぅ』

俺は松崎の身体に馬乗りになり、皺の寄った眉を撫でる。

キロランケ「頼む。諦めて眠ってくれ」

A『お・・・れを、どうする、つもりだ？』

キロランケ「俺たちに協力しろ。協力しなければこのまま殺してやる・・・」

松崎は俺を見つめ、小さな笑みを浮かべた。

A『キロランケ・・・テメエその、顔。
なん、だよ』

　『躊躇って・・・んのか？』

　『わかるぜ・・・俺を、殺したく、ないんだろ？』

俺の心を見透かして、松崎は余裕の表情を見せる。

その間、元々深手を負っていた腹と、今刺されている場所からは血が溢れてている。

身体を起こす力も残っていないのか、右足は地面についたままだ。

キロランケ「・・・・・・松さ―」

A『俺は不屈の松崎だッ！！』

突如、視界が傾いた。

松崎に顔面を蹴られたのだ。

キロランケ「嘘だろ・・・！？どこにそんな力ッ・・・」

松崎は俺との距離を開け、ふらつく足取りで正門に向かおうとした。

俺は松崎を急いで捕まえ、抑え込む。

が、松崎は抵抗をした。

俺の拘束から逃れると、俺を睨めつけ、腹に刺さった銃剣を握る。

触れただけで大量の血が吹き出している。

誰が見てもわかる。

その銃剣を抜けば、松崎は死ぬ。