番外編46話 キロランケの葛藤（1） ページ31
キロランケSide
情報収集をしている間、白石たちはお茶を飲みに行っていた。
念の為、アンケシに何をしていたのかを聞く。
アンケシは少し寂しそうな顔をしたあと、作り笑いを浮かべ呟いた。
アンケシ「アチャたちの話と・・・佐一とAの話を少しだけ」
『【裏切り者・・・なん、で！！】』
松崎の腹を刺した感触が、不意に戻ってきた。
アンケシ「・・・・キロランケニｼパ？
顔色が悪いぞ」
アンケシに指摘され、急いで愛想笑いを浮かべる。
キロランケ「あいつらのことは残念だったな・・・」
アンケシ「・・・なあ。遺体を探しに行くことって出来るのか？」
アンケシが俺を見つめた。
キロランケ「遺体？アイツ等のか？」
アンケシが小さく頷いた。
キロランケ「・・・・・勿論、そのうちな」
俺はアンケシの頭に手をおいた。
アンケシは小さな笑みを浮かべ、「温かいな」と呟いた。
嗚呼・・・この子はなんて幼い顔をしているんだろう。
まだ、十代半ばなのに、俺はとんでもないものを背負わせようとしているのではないか。
アンケシ「・・・・・ねえ」
アンケシが俺の着物の袖を握った。
キロランケ「どうした？」
アンケシ「ちょっと、抱きついても良いか？」
僅かに震えている声。
キロランケ「・・・・・・おう。いいぞ」
アンケシは、俺に抱きつく。
指先が震えている。
アンケシはポツリと呟いた。
アンケシ「・・・信じてるのに。私は信じようと誓ったのに・・・たまらなく怖い」
キロランケ「なにが？」
アンケシ「本当に生きてるのかなあ。
私のせいで・・・Aが死んでしまっていたら―・・・」
キロランケ「っ・・・！」
また、網走監獄でのことが脳裏に浮かぶ。
アンケシは知らない、いや正確に言うと覚えていない。
松崎が爆撃に巻き込まれた原因を。
誰がやったのか、どういう意図でやったのか。
何一つとして・・・・。
俺はイソンノアシを松崎の目の前で殺した。
松崎は怪我を負っていて深手だったし、見られたところで容易く気絶させることはできると思った。
目が覚めてからは、「大人しく言うことを聞かないとアシﾘパとアンケシを殺す」とでも言っておけば良い。
最悪、尾形から聞いた松崎の悪夢をもう一度、
やるしかないと・・・。
でも、松崎は思いの外強かった。
油断していた。
あっという間に俺を押さえつけ、『どういう訳か説明しろ』と言ってきた。
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年12月13日 12時
