番外編45話 消えたコタン ページ30
ASide
エノノカとヘンケは現地に住む樺太アイヌ。
という訳で、俺は気になっていたことをひとつ聞いてみた。
A『・・・いまから十数年前になくなった
村ってあるのかな？』
エノノカ「・・・・・・なくなった村？」
エノノカが首を傾げる。
エノノカ「ヘンケならなにか知ってるかも知れない」
「わたしが生まれる前のことはあまり知らない」
エノノカはそう言うとヘンケの方にへと走っていった。
ーー
夜、エノノカが俺に話しかけてきた。
エノノカ「ヘンケから聞いた。松崎ニｼパが言っていたことってこれかな？」
杉元「え〜？なになにぃ」
杉元も話に入ってきた。
エノノカが俺たちに話し始めた。
エノノカ「いまから十年くらい前。
ここよりもっと北にある樺太アイヌの集落が消えちゃったの」
A『・・・消えた？』
エノノカが頷く。
エノノカ「大陸・・・ロシア人と争いになってね。なくなっちゃったんだって」
「その村は変わっていてね。
他所の村とあまり親交をとらなかったの」
「なんだか・・・不要だとか。
無駄な争いを減らすためだって」
杉元「なんだそりゃ。助け合ったほうがなにかと便利なこともあるだろうに」
エノノカが眉をひそめた。
エノノカ「そう・・・だから大陸に攻められた時も人が足りなくて負けちゃったんだって」
A『・・・・その村ってなにか変わった話とかなかった？』
エノノカ「ヘンケ言ってた」
「【カムイの声を聞く女の子がいた】って」
杉元「・・・・もしかして！」
杉元が顎に手を当て、俺を見た。
俺は小さく頷いた。
A『その村って跡形もなく消えちゃったのか？』
『家や納屋とかだけでも残ってないのかな？』
エノノカ「わからない。ヘンケそこまで話してくれなかった」
「ただ・・・ヘンケ言ってた」
「女の子の帰りをみんな待ってるって」
「女の子が生きていたら今頃十代半ばだろうって」
A『・・・・・・そっか。ありがとう』
エノノカ「ううん。じゃあおやすみ！」
エノノカは俺たちに手を振るとチカパシの隣に寝転がった。
杉元「・・・アンケシさんの話なのかな？
やっぱ」
A『だろうな。そうか・・・残ってるかはわからないのか』
杉元が少し考えてから微笑んだ。
杉元「アンケシさんの家は北海道にあるんだ。
気にすることはないだろ」
そうなのか？
俺は何も答えず、ただ頷いた。
番外編46話 キロランケの葛藤（1）→←番外編44話 父の遺骨（3）
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年12月13日 12時
