221話 四人の距離(2) ページ34
Aと杉元は、小さく頷いた。
杉元「確かにそれもある」
A『・・・俺はアンケシさんをいつの間にか彼女と重ねていた』
アシリパとアンケシは二人の顔を見つめた。
杉元「ウイルクが網走監獄で撃たれる直前。
なんと言ったか俺はアシリパさんに伝えずにいた・・・」
A『イソンノアシもウイルクも揃いも揃ってとんでもないことをほざいていたよ』
杉元「アシリパさんとアンケシさんを山で潜伏し戦えるように育てたと俺達に言っていた」
A『アイヌを導く存在にするってな・・・』
少女ふたりは言葉を失う。
杉元「ウイルクとイソンノアシは・・・何も知らないアシリパさんとアンケシさんを金塊争奪のなかに無理やり巻き込んだ」
「キロランケも暗号の解き方を思い出させるためとはいえアシリパさんとアンケシさんを樺太まで連れて来て」
「結果的にだが・・・自分の命を引き換えに戦って守るしか無いのだという選択肢へ二人を追い込んでしまった」
「Aだって、もとを辿ればウイルクとイソンノアシがこんな計画を立てなければ」
「・・・巻き込まれず平穏に暮らせていたんだ」
杉元が眉間に皺を寄せて呟いた。
杉元「俺はそれが許せない」
「【アイヌの先頭に立って死ね】と。
【戦って人を殺せ】とあいつらはアシリパさん達に呪いをかけたようなものじゃないか」
「俺は親になったことなんてないし・・・武人としての親の責任のとり方ってのがあるかもしれないけどよ・・・」
Aが言葉を繋げる。
A『アシリパとアンケシさんは本当にそうしたいのか?』
『俺は親父に北海道に連れて行かれた時から軍人になる道しか残されていなかった』
『その結果・・・たくさんの人間を殺した』
手のひらを見つめ、Aは眉をひそめた。
杉元「人を殺せばなんとかって地獄に落ちるって言ってたよね?」
「信心深くないアシリパさんはそれをどう解釈してる?」
「信心深いアンケシさんなら分かってる筈だけどよぉ・・・」
「地獄を考えたやつは俺やAみたいにたくさん人を殺して・・・」
「元の自分に戻れず苦しんだのかもしれない」
Aと杉元はアシリパとアンケシを真っ直ぐと見つめた。
A『アシリパとアンケシさんはまだそれを知らずに済んでいる』
『俺達はアシリパとアンケシさんにこの金塊争奪戦から下りてほしい』
『知ってからではもう遅いから』
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白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます!訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います!そちらの方で頑張ります! (2022年1月8日 19時) (レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白文鳥 | 作成日時:2021年1月18日 21時