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220話 アイヌの昔話(4) ページ32

稲葉「10年以上前に我々が小樽で撮影した」

アシリパが声を上げた。

アシリパ「これ・・・私の(コタン)だ!!」


アンケシさんが俺の腕を掴む指先の力を強めた。

アシリパが「アンケシとそっくりだ」と声を上げる。


鉢巻に刺繍を施している女性の姿が映し出されている。


稲葉さんがアンケシさんを見つめながら言った。

稲葉「裁縫が得意でね。それに薬学に長けていたよ」

  「髪の色は黒っぽい色をしていたけど瞳は変わっていて碧色だった」

  「笑った顔が・・・君と似ている」

  「我々が撮影をしに行った翌年には居なくなっていて、樺太に渡ったと聞かされたよ」


アンケシさんは「ハポ」と声をもらした。



そして、次に映し出された写真を見て、アシリパが「アチャ!?」と驚きの声をあげた。

稲葉「この男性は深い青い目の色が印象的だった」

  「松崎さんみたいなね」

白石「え?これがウイルク?」

鯉登「のっぺら坊はこんな顔だったのか」

杉元「じゃあこの隣の女性は・・・」


アシリパとそっくりの顔をした女性がウイルクと楽し気に話している写真。

稲葉「ジュレールはこの女性があなたにそっくりだって」

アシリパがポツリと呟いた。

アシリパ「明るくて晴れの日みたいなひとだったって」

  「アチャが」


ふたりの少女は思わぬ形で母親の姿を目にすることになった。


稲葉さんはアシリパに向けて声をかけた。

稲葉「あなたの父上は樺太から来たアイヌで結婚するために日本の国籍を取ると言っていたよ」

  「戦争がまあ起きたら召集されるからやめておけと冗談を言ったんだけど」

  「このあと日露戦争へは参加されたのかね?」


次の写真で、ウイルクとキロランケが映りこんだ。

アシリパとアンケシさんはそれを黙ったまま見ている。

A『・・・・』

その時だった。


機材が音を立てたかと思えば、あっという間に火がついた。

俺達は急いで出口に向かう。


アシリパとアンケシさんが、後ろを振り返った。

二人は燃え広がって灰になっていく写真をジッと見つめていた。


そして、前を向くと建物から避難していった。

221話 四人の距離(1)→←220話 アイヌの昔話(3)



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白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます!訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います!そちらの方で頑張ります! (2022年1月8日 19時) (レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白文鳥 | 作成日時:2021年1月18日 21時

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