220話 アイヌの昔話（3） ページ31
アシﾘパがそんなチカパシに注意をした。
アシﾘパ「おいチカパシ何だそのポカンとした顔はッ」
チカパシがアシﾘパの方を見る。
アシﾘパ「そんな芝居じゃ伝わらないッ。
そんな表情じゃ何も伝わらないだろ」
「いいかチカパシ！この場面はな」
「身寄りのない主人公を保護して旅へ連れて行き悪いカムイたちと戦い立派な男に育て新しい家族まで持たせてくれた・・・」
「そんなひととの永遠の別れの場面なんだぞ！！」
アンケシ「感謝の想いと寂しさを全身で表すんだッ」
チカパシが再び、谷垣を見つめたので、再開する。
A『大きな鳥の落とす涙は雨となりわたしたちの頭上に落ちてきた』
顔を上げると、チカパシの目から大粒の涙が溢れ出ているのが見えた。
そして、小さな声で「谷垣ニｼパ」と呟いている。
・・・アシﾘパが主役にチカパシを選んだのは、
この物語の主人公との生い立ちが似ているからだ。
アシﾘパとアンケシさんはその演技を見て、体を震わし、撮影機の方を見ると撮れたのかを確認する。
こうして、騒がしい監督と脚本家の【物語作り】は終わりを告げた。
ーー
それから数日後。
稲葉さんが俺たちについてくるようにと声をかけた。
どうやら鯉登少尉が芝居小屋を借りたらしい。
そこで先程撮ったものを見ようということになった。
杉元とアシﾘパの後ろに白石が座った。
俺とアンケシさんは白石の後ろに腰掛けた。
A『見えそう？』
アンケシ「・・・うーん」
アンケシさんの身長じゃ見辛いだろうな。
A『膝に座る？』
そう言って自分の膝を叩くとアンケシさんは「そうする」と頷いた。
A『見やすくなった？』
アンケシ「さっきよりは大分良いぞ」
そして、上映が始まる。
歓声が上がり、次の瞬間には真剣な表情でこの場にいる全員が写真に見入っていた。
アンケシさんも、その一人だった。
パナンペ・ペナンペから、ケソラﾌﾟの身の上話。
そして、アシﾘパが稲葉さんたちをクズリから助けた写真が次々と映っていく。
白石「あれ？これもこないだ撮ったやつ？」
アシﾘパ「いや・・・」
杉元「樺太アイヌの家じゃないよね？」
杉元が確認するようにそう呟く。
稲葉さんがこちらを振り返り、ニヤリと笑った。
稲葉「ジュレールがお嬢ちゃん達を撮影していて気になることがあったのでこの活動写真を見てほしいそうだ」
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白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます！訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います！そちらの方で頑張ります！ (2022年1月8日 19時) (
レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2021年1月18日 21時
