217話 似顔絵（2） ページ22
杉元「尾形はキロランケと組んで俺とAとのっぺら坊を撃った」
「そしてと片腕のロシア人はキロランケに殺された」
「いつの間にコイツらが組んでいたのかはわからないんだけどな」
絵を使いながら説明を始めた。
が、ロシア兵はそんなことはどうでも良いらしい。
蜘蛛の絵を描いて杉元の絵と並べてみせた。
杉元「違う！蜘蛛じゃない」
A『はははッ・・・もう、無理ッ』
杉元「うるせぇ！Aだって絵下手くそだろ！？」
A『俺は下手なんじゃない。上手く描こうとしないだけだ』
気を取り直して杉元は話を続ける。
杉元「アシﾘパさんの毒矢が尾形の目を射ったんだ。アシﾘパさんは射る気はなかったと思うよ」
「俺は目をえぐって助けた。あの子を尾形の死で汚したくないから・・・」
「勿論、アンケシさんが同じ立場だったとしても、俺は尾形を助けたよ」
杉元が鉛筆の動きを止め、ポツリと呟いた。
杉元「アシﾘパさんとアンケシさんを見てると」
「俺のなかにも子供の頃に確かにあったような」
「きれいな部分がまだ残っているんじゃないかって思えて」
「救われる」
俺は何も言わずに、ロシア兵が描いたアシﾘパとアンケシさんの絵を見つめた。
鉛筆で薄く色分けがされている。
ふたりの少女の瞳は、薄い色で描かれていた。
これだけで分かる。
この二人の目は、綺麗なんだろうって。
A『アンケシさんとアシﾘパが見ている世界に俺もいると思うと』
『なにか綺麗なものになった気がして』
『心が和やかになる』
俺を優しく映してくれた彼女に。
俺をいつも受け入れてくれていた、あの子に。
優しい緑が、包んでくれる様で俺は、梅の花のしたで笑った日を思い出すんだ。
谷垣「お前らなにやってんだ！？」
谷垣が駆けつけてきて、俺たちに声をかけた。
月島軍曹たちもいる。
アシﾘパとアンケシさんが俺と杉元に「怪我はないか」と聞いてきた。
俺と杉元は頷き、二人が無事だというのを確認すると胸を撫で下ろした。
ーー
アンケシ「このニｼパは国境でキロランケニｼパを待ち伏せていたロシア兵のひとりだと思う」
月島軍曹がすべてを説明する。
そして、「皇帝殺しとは無関係だ」と伝えるとロシア兵が描いた絵を床に投げた。
脚を撃たれた白石がロシア兵に文句を言うが口を怪我しているため、会話は不可能だった。
俺達はロシア兵に別れを告げ、その場を後にした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます！訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います！そちらの方で頑張ります！ (2022年1月8日 19時) (
レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白文鳥 | 作成日時：2021年1月18日 21時
