216話 似た者同士（1） ページ18
アンケシSide
私達はそれから数日後。
ロシアを去り、日本領にへと帰ってきた。
そして、樺太アイヌの集落にお邪魔する。
樺太アイヌのお婆ちゃんが【口噛み団子】を振る舞ってくれた。
Aは酒盛りをしている佐一と白石を横目に静かに食事をしている。
アンケシ「A―」
鯉登「松崎」
A『・・・はい？』
鯉登ニｼパがAを睨めつけた。
鯉登「貴様はロシア語を本当に話せないのか？」
Aが目を細め、頷いた。
A『俺は話せませんよ。相手が言っていることをかろうじて理解できるだけ』
『月島軍曹やアンケシさんとは違ってその程度の知識しかありません』
鯉登「・・・・そうか」
どういった意図で聞いたのかは分からない。
でも、鯉登ニｼパの眼は依然として鋭かった。
アンケシ「・・・・？」
月島ニｼパが私をじっと見ている。
アンケシ「わたしの顔になにかついていますか？」
月島ニｼパが首を横に振り、「なるほどな」と呟いた。
月島「松崎少尉。そういうことだったんですね」
Aの瞳が青黒く光る。
そして、『えぇ』と頷いた。
鯉登「アンケシ。ちょっとこっちに来てくれ」
鯉登ニｼパが手招きをしてきた。
私は鯉登ニｼパの目の前に座る。
鯉登ニｼパの手のひらが私の頬に触れた。
鯉登「・・・ロシア人と似ているのだな。
貴様は」
アンケシ「・・・私のアチャはロシア人の血をひいていますから」
「この目はハポ譲りですが・・・恐らくハポも他国の血が流れていたんだと思います」
鯉登「・・・綺麗だな」
アンケシ「ありがとうございます」
Aが鯉登ニｼパの手を私の頬から退けさせ
呟いた。
A『【目は口ほどに物を言う】・・・。
アンケシさんの瞳が綺麗なのはアンケシさんの心が綺麗だからだ』
アンケシ「・・・」
鯉登「貴様がそこまで褒めるのは珍しいな」
Aが目を細め、私の顔を見つめた。
A『この瞳に悪い人間はひとりも居ませんよ・・・間違いない』
アンケシ「それって――」
【赫映・ヴァレーズ】のことか？
なんて、言いそうになって慌てて口を閉じた。
この話をするなら二人きりが良い。
なんとなく、そんな気がした。
夜中、Aが寝たのを確認して百から受け取っていた写真を取り出した。
アンケシ「・・・貴方の眼も。私と同じ色だったのか？」
返事なんてない、でも、何となく分かる。
アンケシ「ほんと、そっくりだな」
溜息が出る程に。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白文鳥 - ととさん» 嬉しいお言葉を有難うございます！訳あってこの作品はpixivにお引っ越ししました。励みを有難う御座います！そちらの方で頑張ります！ (2022年1月8日 19時) (
レス) id: 50fca864bb (このIDを非表示/違反報告)
とと - ここまで一気に読み進めてしまいました。続きが読みたくて、急いで単行本を読みました笑 主人公と周りとの距離感がたまらなく好きです。 (2021年6月24日 22時) (レス) id: 2c3ad1893b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白文鳥 | 作成日時：2021年1月18日 21時
