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122話 鶴の舞(1) ページ7

俺たちは数日後、釧路に着いた。

いまは白石と百を近くの湿原に待たせて四人で狩りに出ている。

俺の格好が暑苦しいと文句を言われ、ほんの2、3日前に軍服から杉元みたいな服装に変えた。

俺は動ければなんだって良いけど、アンケシさんが粘ったっていうのもある。

アシリパとアンケシさんが杉元と俺を引き止めた。

アシリパ「杉元、松崎ちょっとこれ見てみろ」

杉元「なになに〜?今度はなんのウンコ見つけたの〜?」

少女の視線の先には・・・。

A『このエゾシカ・・・ヒグマにやられたのか?』

アンケシ「ヒグマの傷じゃない。人の足跡がある。メッタ刺しに殺してそのまんまにしたんだ・・・」

アシリパが呟く。

アシリパ「ピンネラウ【若いオス鹿】だ。
死んで何時間かたってる」

杉元「猟師かな?」

鹿の死体のまわりに烏が集まってきた。

そのうちの数羽は俺の身体に乗ってきた。

俺は一羽一羽を優しく地面におろしながら言った。

A『猟師なら獲物の毛皮をズタズタにしないだろう』

アンケシさんが頷く。

アンケシ「それに夏なのに肉の処理もせず何時間も離れないと思う」

杉元「アシリパさんこの肉どうする?白石たちに持って帰る?」

アシリパとアンケシさんが首を横に振った。

アシリパ「いや・・・なんか嫌な感じがする。
お祈りだけして立ち去ろう」

アンケシ「あっちの湿地に仕掛けた罠を見てこよう。水辺の鳥が掛かってるかも」


ーー

アンケシ「これは【カシンタ】という水鳥用の罠だ。太い部分はぶどう蔓で出来てる」

  「ヒモを木に結んで罠を水面に浮かべ輪の中に餌を沈める」

アシリパ「餌を食べようと水辺の鳥が輪の中に首をいれると・・・くくり罠が締まる」

杉元「なるほど。ぶどう蔓は【浮き】の役割か」

アンケシさんが俺の手を引っ張った。

アンケシ「私達で向こうの罠を見てこよう」

A『はいアンケシさん』

俺たちは二手に別れた。

ーー
結局、見に行った罠には何もかかっていなかった。

アンケシ「ま。私が仕掛けたからそんな気はしてた」

A『奇遇だね。俺もそんな気はしてた』

アハハと笑い、俺たちは帰路につく。

その途中でアンケシさんが問いかけてきた。

アンケシ「Aは頑なに黒い外套を脱ごうとしなかったけど。あれはなにか思い入れでもあるのか?」

A『う〜〜ん。まあそうだね』

アンケシ「ところどころ糸だって解れてたし・・・直してやろうか?」

A『いや。いいよ別に』

122話 鶴の舞(2)→←121話 夏に言われぬもの(3)



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作者名:白文鳥 | 作成日時:2020年12月13日 20時

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