138話 音の正体（2） ページ49
私とアシﾘパはインカﾗマッカッケマッの返しに言葉を失った。
一気に全身が熱を帯びる。
アシﾘパは耳を真っ赤にしながらほとんど叫び声をだしながらいった。
アシﾘパ「私と杉元は相棒だ！！」
「それ以上でも以下でも無いッ」
アンケシ「そうですよ。その他の関係なんてあり得ない！」
インカﾗマッカッケマッがクスクスと笑う。
何か他の話題を振ろうとしたときアシﾘパが廊下に目をやった。
アシﾘパの視線の先には佐一の身体をほぐしたあんまさんが居た。
アシﾘパがあんまさんに声を掛けた。
アシﾘパ「ひとりで大丈夫か？」
確かこの人も目が見えないんだ。
アシﾘパがあんまさんのもとまで歩いていったので私も付いていく。
あんま「ありがとう。夜道はお嬢ちゃんより得意だよ」
アンケシ「ほんとですか？」
あんまさんが小さな笑みを浮かべながら頷いた。
あんま「ああ。真っ暗でも転がっていった小銭だってすぐ拾えるんだから」
「お嬢ちゃんには出来ないだろう？」
アシﾘパ「アンケシはできるけど私には出来ない」
私は他の人よりも耳がいいからな。
視界が狭くなったら耳で大体のことを理解出来る。
困ったらカムイに聞けばいいし(答えてくれるかは分からない)。
あんまさんが呟いた。
あんま「目が見える人はそっちに大きく頼りがちだからね」
「目が見えない分あたしらにしか見えないものがある」
あんまさんが私たちに忠告した。
あんま「そうだお嬢ちゃん方。夜のゲタの音に気をつけなさい」
アシﾘパ「ゲタ？」
あんま「夜になるとこのあたりに出て来る盲目の盗賊さ」
「みんなはゲタの音だって言うけどあれは違う。ある晩にあたしも聞いたことがある」
「あれは舌の音だ。舌を鳴らした音の反響でものを見る」
【カン・・・カン・・・】
アンケシ「舌を鳴らすってどんな風にですか？」
あんまさんが実際にやって見せてくれた。
カンッと確かに聞いたことのある音が鳴った。
私とアシﾘパは武器を片手に走り出した。
アンケシ「あの時の聞いたことのない音は舌の音だったのか」
アシﾘパも聞こえていたらしい。
アシﾘパが呟いた。
アシﾘパ「私たちは屈斜路湖に来たときからずっと・・・見られていた！！」
盗賊たちが襲ってくるのは今しかない。
なぜなら目が見える相手と戦うには暗がりで相手が武器を持っていないときに限る。
そのほうが有利だから。
私とアシﾘパは駆け出していった。
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作者名：白文鳥 | 作成日時：2020年12月13日 20時
