銀に焦がれる【94】 (ページ6)

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コン、コン、コン。がちゃり。

きっちり三回鳴らされたノックに応えるのも、これで三回目。ロナルドはもう驚きもせずにドアを開き、そこに佇む吸血鬼と視線を交わした。吸血鬼特有の赤色がやわらかく細められる。

「先日振りだね、退治人ロナルド。ドラルクはいるかな？」

もはや挨拶代わりとなり始めているその言葉を聞いて、ロナルドはひどく神妙な顔つきをした。

「…………ひとつ言っていいか？」
「どうぞ」
「＿＿＿いくらなんでも三回連続はおかしいだろ！！」

知り合いを訪ねたらたまたま不在だった。まぁないことはない。しかしそれが一回、二回、三回と連続になると、明らかにおかしい。そういう能力のおポンチ吸血鬼でもいるのだろうか。そう考えると一人ぐらいいる気がしてきた。だってここシンヨコだし…。

そこまで考えて遠い目をしたロナルドが、ふとやけに静かなAの存在を思い出して視線を向けると、Aはどこか哀愁を感じさせる笑みを浮かべていた。乾いた笑みとも言う。

「…………我ながらそう思うよ…」
「……あ、えっと…なんか、サーセン……」
「君が謝ることじゃない」

どうやら本人も気にしていた様子。図らずとも傷を抉っちゃったかな、とロナルドは頭を下げようとしたが、Aは首を振って制止した。そして言葉を足す。

「いっそのこと笑ってくれた方が嬉しいよ。すべて僕の体質のせいだからね」
「体質、ってドラ公の砂みたいな？」

ロナルドが身近な例を挙げて訊ねると、Aはうんうんと首肯した。

吸血鬼なんだし、世間一般が言う『体質』とは少し違うのだろうなと見当はついているが、彼は一体どんな体質だと言うのだろう。
なんだかAからものものしい雰囲気を感じて、ロナルドは無意識にごくりと唾を飲みこんだ。

Aはゆっくりと口を開いた。

「僕はね、

＿＿＿言わゆる不運体質ってやつさ」

「思ってたよりもショボいな」

さっきまでのシリアスっぽい雰囲気はなんだったんだ。ロナルドが呆れると、「ちょっとしたおふざけだよ」とAは楽しげにカラカラと笑った。しばらくそれを呆れ顔で見ていたロナルドも、なんだか可笑しくなってきて破顔した。

吸血鬼の享楽主義と言うよりも、これはむしろユーモアと呼ばれるものだろう。もしかして、傷を抉ってしまったことを気にするロナルドの気を逸らそうとしてくれたのかもしれない。やっぱりヤバい人なんかじゃねぇな、とロナルドは思い、そしてまた笑った。