銀に焦がれる【94】 (ページ5)

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「そういやまた来てたぞ、Aさん」
「ええ……こわ……」

御真祖様からようやく解放されてエベレスト(山頂でスキーをしていた)から帰ってきた日の晩、例の友人がまた来ていたと報告するロナルドの言葉を聞いて、ドラルクは思わず口角をひきつらせた。なぜなら恐怖を感じたので。

自分を抱きしめるように両腕を抱えたドラルクの不審な行動に、ロナルドは怪訝な表情を見せた。

「いや別に怖くねぇだろ。マトモそうな人だし」

ドラルクはなんとも言いがたい表情をしながらロナルドを凝視した。その背後には無限の宇宙が広がっている。言うなればスペースヴァンパイア状態。

「Aが……マトモ………？」

正気か？という副音声がどこからともなく聞こえた気がしたので、とりあえず一発殺しておいた。ジョンは泣いた。

あっけなく殺されたドラルクは毎度の如くナスナスと再生し、そしてやけに真面目な顔をつくり、今度こそ「正気か？」とのたまった。幻聴じゃなかった。もう一度殺した。ジョンはもう一度泣いた。

「少なくともお前よりは絶対マトモだろ」
「ロナルドくんは出会ったばかりだからそんなことが言えるんだ！とんでもないんだからなあの男！そう、例えば、」

あのAさんが、とんでもない？あんなに丁寧で常識人っぽいのに。
でもロナルドよりAを知っている友人のドラルクが言うのだから、何かあるのだろう。そう思って続きを促してみるが、なんだかドラルクの様子がおかしい。なんで汗かいてんだコイツ。

「…………ｱｯ…ノーコメントでお願いします」
「はぁ？」

しばらくしてドラルクは蚊のような細い声でそう言ったかと思うと、次の瞬間には砂になってしまった。今度はなんにもしてないのにな、とロナルドは首をかしげる。しかもよく見ると、砂はプルプル震えている。正直ちょっとキモい。この短時間で一体何があったというのか。
床にパラパラと広がる砂が喋った。

「ビコーズ、ワタシ、マダ、死ニタクナイ」
「なんだそりゃ」

まったく意味がわからない。そもそもドラルクはいつも死んでいるだろうに。ロナルドの頭上にハテナが飛ぶ。しかしドラルクはそれ以上言うつもりはないらしく、やはりプルプルと砂のままで震えるばかりなので、ロナルドは言及を諦めてジョンと遊ぶことにしたのだった。