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コン、コン、コン。

それが再び聞こえたのは、その三日後のことだった。なんだかちょっと気まずげな顔をしたロナルドはゆっくりとドアを開けて、例のマトモな吸血鬼を事務所へと招く。
そんなロナルドの心境なんて露ほども知らないAは、赤い目を細めて微笑んだ。

「先日振りだね、退治人ロナルド。ドラルクはいるかな?」
「あー……えっと…」

Aの軽い声色とは対照的に、ぽりぽりと頭を掻いたロナルドは口をもごもごとさせた。別にAに後ろめたいことがあるわけではないが、なんか申し訳ないのだ。だってこれは完全に予想外だった。

「…いやぁ……それが昨日から、ジョンも一緒にドラルクのじいさんに拉致されてて…」

要するにそういうことである。それはもう、タイミングが悪かったとしか言いようがなかった。暇だと呟いてしまったドラルクも、まさか背後の影から御真祖(おじい)様がニョッキリと出てくるとは思っていなかったのだろう。

申し訳なさそうに視線をさ迷わせるロナルドに顔を上げさせたAは苦笑を浮かべた。

「それだったらいつ帰ってくるかわからないし、待ってるわけにもいかないね。……また出直すよ…」

しょんぼり。笑ってこそいるが、纏うのは今にもそんな音が聞こえてきそうな雰囲気だ。ドラルクに会えないのがよほど残念なのだろう。ロナルドはいたたまれなくなって、気付いたら口を開いていた。

「えっと、ほら、元気出してください!ね!多分次こそはいる…と!思うんで!」

しどろもどろながらもロナルドに励まされたAは、驚いたように目をまるくさせて、そして今度はへにゃりと破顔した。

(…案外、表情に出やすいんだな)

ロナルドはなんとなくそう思った。

「……ふふ、ありがとう。やっぱり君は優しいね」
「え?いやいやそんな、俺なんて」
「ふむ、日本では謙遜は美徳と言うけれどね…。まぁ、君のおかげで元気が出たってことさ。それじゃあまた会おう、ロナルドくん」

そう言い終えるやいなや、Aの黒いマントが翻される。ひとり事務所に残されたロナルドは、ドラルクよりもやや低いAの声を頭に反芻させた。

(今、初めて普通に名前呼ばれたのか)

なんだかちょっと、心がくすぐったいような、ソワソワするような、変な感じだ。

(……って、らしくねぇな)

何かを誤魔化すように伸びをしたロナルドは、ロナ戦の原稿をやっつけるべくデスクに向かうことにした。

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作者名:どるどる | 作成日時:2022年2月6日 22時

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