「惚れさせ屋」佐野玲於 (ページ29)

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stage 29 ページ29

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彼女と別れた。

って言っても、彼女は俺の気移りにずっと前から気付いていたらしい

何度も別れたくないと泣かれたけどそこで「分かった」とならないのが俺

最後は思いっきりビンタされたけど

今の俺にはそれくらいの方がいい

俺を好きなまま別れるより、嫌われた方が辛くないっしょ？

「 … え、どうしたんですかその顔」

玲於「あー、うん。ちょっとね」

俺の左頬は思ったよりも赤くなっていて

ビンタされる時に爪が当たり少し引っ掻き傷が出来ていた

Aさんは俺を見るなり心配そうに駆け寄ってくる

今から撮影なのにこんな傷作ったら怒られるよな

「冷たいけど、ジッとしててくださいね」

彼女は何処からか氷を持ってきて、可愛らしい色のハンカチに包むと

俺の頬にそっと氷を当ててくれた

… なんか、保健室の先生みたい。

玲於「冷て … 」

「冷やせば少しは赤みもなくなるかと … 」

こういう事を彼女は計算でやってるのか

それともさりげなくこういう事が出来る人なのか分からないけど、

彼女に会う度に、話をする度にもっと知りたくなる

そんな彼女を見つめると、俺の頬に手を添えたまま黙ってしまった

「 … ？」

玲於「優しいね、Aさん」

「え、そうですか … ？」

玲於「俺にだけ、優しかったらいいのに」

他のメンバーにも超が付くほど気が利くから妬けちゃうんだけどね

でも、酔った時に甘えさせてくれたのは俺ぐらいじゃねーかな。なんて

玲於「痛いのとんでけ、ってしたら治るかも」

「 … 玲於さん、それは子どもです」

玲於「いーじゃん、やってよ。」

偶然にも、今は俺たち2人しかいない。

Aさんは困ったように眉を下げて「しょうがないな」と笑った

俺のワガママに付き合ってくれるの、ちょっと嬉しそうじゃん

「痛いの痛いの、とんでけ～」

玲於「ふは、効きそう効きそう」

「 … 彼女さんとケンカですか？」

玲於「まぁ、そんなとこ」

普通こんなとこ赤く腫れてたら、誰かに叩かれたって思うよな。

間違っても頬なんて滅多にぶつけないし
引っ掻き傷が何よりの証拠

「こんな綺麗な顔叩くなんて … 」

玲於「綺麗な顔って(笑)」

綺麗な顔、なんて初めて言われた

綺麗な肌、とか可愛いとかはよく言われるけど
そんな風に見つめられたら俺

Aさんのこと

もっと困らせてやりたくなるじゃん

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