◇ ページ13
.
───なんて会話を翔吾と交わしたのが、数日前。
「(頻度多くね？大丈夫かこの人……)」
『っ、はぁ……こほ、こほっ』
「喉痛めてないっすか？はい、水」
『は、あり、がと、ございます……』
蹲る人影が視界に入った瞬間、デジャヴかよ……と声に出して言いかけた。
近くにあったソファに座らせて水を手渡すと、蚊の鳴くような声でお礼を言われ、会釈を返す。
『……』
「……今日は仕事っすか？」
『ぁ、いや……今日は、打ち合わせで』
「この後は？」
『帰るだけです』
「ふーん……」
それ以上は会話が続かず、沈黙が流れる。
ゴクリとひと口水を飲んだ彼女は、所在なさげに俯いて唇を強く噛み締める。
「……それ、癖っすか」
『、えっ？』
「唇噛むの。こないだもやってた」
『え、うそ……』
癖らしきものを指摘すると、無意識だったようで驚いた様子を見せる。
唇を噛む癖。
諸説あるが、ストレスを抱える人に多いらしい。
「……あ、あった。
はい、これ」
『え、……？』
「飴、食べれます？」
『あ、は、はい……』
「なら、どうぞ。
唇噛むのは傷になると目立つんで、気休めにでも」
『……ありがとうございます』
「いえいえ」
ポケットに入っていた、ソーダ味のキャンディ。
おずおずと受け取った彼女は、封を開けて口に放り込んだ。
『……おいひい』
「それは良かった」
『……』
「……いろいろあると思いますけど、うちの寮とか駆け込み寺にしてくれていいですからね」
『っ、』
「何が出来るわけでもないですけど、RAMPAGEやったら翔吾も、樹もまこっちゃんも翔平もおるし。
気心知れた連中と一緒に居たら、ちょっとは気が紛れるんじゃないですか」
ある日突然、天涯孤独になった、中学生の女の子。
どうしても放っておけない自分が居た。
「みんな心配してるし、ちょっとでも力になれるところはなってあげたいと思ってます」
『……』
「うちは人数だけはアホほどおるから、寮でも賑やかで飽きないっすよ〜」
努めて明るい口調で話していると、彼女の肩がピクリと動く。
『……きょう、』
「ん？」
『……誰も予定、合わなくて……。
1人で、家に居ないといけなくて……』
「……はい」
『…………行っても、いいですか』
「……もちろん」
帰りましょうか、と差し出した掌に控えめに重ねられた彼女の小さな手を、安心させるようにギュッと握った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 451人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「紅一点」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
壱臣love(プロフ) - 時間はどれだけかかっても構いませんので御検討お願いします! 無理でしたら全然大丈夫です!♡ (2022年2月19日 8時) (
レス) id: be2860f083 (このIDを非表示/違反報告)
壱臣love(プロフ) - 初コメ失礼します! いつもお話大スキで読ませていただいてました♡ お忙しい中更新ありがとうございます! これはリクエストになってしまうのですが､BOTでの壱馬くんとの出来事をお話にしてもらうのは可能だったりしますでしょうか😭 (2022年2月19日 8時) (レス) id: be2860f083 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 久々の更新ありがとうございます😭😭また楽しみにしております (2022年2月14日 21時) (レス) id: 20e95c7407 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - 更新楽しみにしています!! (2021年9月26日 13時) (レス) id: 20e95c7407 (このIDを非表示/違反報告)
美紀(プロフ) - 移行おめでとです最高ですコロナウイルスに気をつけてくださいね (2021年7月14日 19時) (レス) id: e19dcb272d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ALICE x他1人 | 作成日時：2021年7月13日 14時
