*Only winner* (ページ9)

今日:8 hit、昨日:7 hit、合計:125,771 hit

◆王子とページ9

.

「何食べたい？」

『何でもいいかな』

「1番困るやつ……」

仕事終わり、めずらしくこの後何も無いらしい我らが王子・涼太くんからお誘い頂いて、夜ご飯を食べに行きます。

「じゃあ俺が店決めていい？」

『いいよ。いつもそうだし』

「ほんっと食に興味無いよね。逆にAは何だったら興味あるの？」

『……音楽？』

「それ以外」

『えー……3日ぐらい欲しいなその質問』

「悩みすぎやろ」

軽口を叩き合いながら街をうろつく。

仕事の疲れもあってついついボーッとしながら歩いていたら、急に腕をグッと引かれた。

「自転車、危ない」

『わ、』

前からやってきた自転車に気付かずフラフラ歩く私を庇うように手を引いてくれた涼太くん。
そのまま抱き寄せられて、ポスッと涼太くんの胸の中に収まる。

「もう、危ないからフラフラ歩くんやめて。怪我したらシャレにならんやろ」

『……』

「A？聞いてる？」

何やら喋っている涼太くんの顔を綺麗だなあ、と見つめていたら、聞いてる？と肩を叩かれた。

『……私じゃなかったら絶対恋に落ちてるシチュエーションやんな、これ』

「……聞いてなかったのね」

『うにゅ、』

私より25センチぐらい背の高い涼太くんを見上げて呟くと、呆れた顔でほっぺを両手で潰されて、タコみたいにされた。

「アホなこと考えんでええから、外歩く時はちゃんと前見て歩いて。マジで危ないから」

『ふぁい』

「はい、よろしい」

ぱ、とほっぺから手を離した涼太くんは、そのまま私の右手を取って歩き出す。

「イタリアンの店、予約取れたから行くよ」

『イタリアン……パスタ？』

「とか、ピザとか。え、嫌？」

『やじゃない。ってか、何でもいい』

「でしょ」

.