*Only winner* (ページ42)

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「急やったのに、来てくださってありがとうございました」

『こちらこそ、誘ってくれてありがとう。すごい楽しかったよ』

その後もそれなりに飲んで食べて話も盛り上がって、ようやくお開きになった。

「海青、Aの家と方向一緒やろ？送ったってや」という龍友さんからの依頼を二つ返事で引き受け、Aさんと2人、夜道を歩く。

「思い返したら、僕、めちゃくちゃ失礼なことばっか言いましたよね。すいません」

『ええ、そんなことないよ。
なんか、自分で言うのもあれだけど、本当に私のこと好きなんだなって実感して嬉しかったよ』

天使は、流石にびっくりしたけど。
照れ笑いを浮かべながらそう呟くAさんは、やっぱりめちゃくちゃ可愛らしい人だ。

「好きっすよ、ずっと。僕、初めて会った時からずっとAさんの1番のファンな自信あります」

『すごい熱烈だねえ』

「そんぐらい僕の中で衝撃的やったんです。あのドームツアーの時、ステージで見た姿は、一生忘れられないです」

熱く語る俺に対して、Aさんは冷静に言葉を返してくれる。
ドームツアーの話をすると、Aさんは一瞬だけ顔を強張らせたように見えた。

『……それだけ褒めてくれる人が居てくれると安心するよ。
あの頃、無理やりにでもステージに立ったのは本当に正しかったのかなって、今でも悩むことがあるから』

ス…と切なげに目を伏せるAさん。

あの時のAさんはパニック障害を患ったばかりで、相当無理を押して仕事をしていたらしい。
当時はGENERATIONSのメンバーと一部のスタッフ以外には一切の情報を伏せていたらしく、TRIBEメンバーにも詳しい事情は伝えられていなかった。

ずいぶん後になって、Aさんが病気を公表したことで詳しい事情を知り、あの時のあれはそういうことだったのか、と合点がいった。

「正しかったかどうかは、分からないですけど……でも、少なくとも俺はめちゃくちゃ感動しました」

『……感動、ね』

「、Aさん？」

『その感動は、私のパフォーマンスそのものに対して？
それとも……私が、体調を崩してる中で無理を押してまでツアーをやり切ったことに対して？』

俺とAさんの間を、サァッ……と冷たい風が通り過ぎていった。

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