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「ただいま〜……」

家に着いた。
私はカバンをその場に放り出し、制服のままリビングに行った。
お母さんは何も言わず、カバンを片付けてくれた。

ごめん、お母さん。
次からはちゃんと自分でやるから。

私はテーブルの下で寝ていたペットのアヤを撫でた。
ふわふわしてて、さわり心地がいい。
アヤったら半目だけ開けて私を見てる。

あ、目を閉じちゃった。
そんなに眠いの?いつも、こんなにぐうたらしてるの?
はぁ……だから最近お腹が出てきたんだね?

心の中でアヤにそう言う。
もちろん、アヤは何も返してくれない。口に出していたとしても、返してはくれてなかっただろうけれど。

「アヤ」

私はアヤをテーブルの下から出して、抱き締めた。
アヤが少し嫌がる。もぞもぞと動いて、私の腕の中から逃げようとする。
いつもなら放していたけど、私は放さなかった。

「ユイね、死んじゃったの」

ユイっていうのはね、私のクラスの中での唯一の友達でね……___

「きっと、寂しかったんだと思う」

教室の中にいるときより、気分が少し楽になったからと言っても、やっぱり罪の意識は消えない。
寂しさは消えなかった。

私はアヤを抱き締めたまま泣いた。
アヤのふわふわだった毛が、私の涙によって濡れてしまう。

今日で二度目の涙だった。

お母さんは気を使ってか、リビングには居なかった。
リビングには私とアヤだけ。
こんな暗い暗い部屋に、私とアヤしか居ない……。

「うわぁ……ぁああぁぁ……ぁああああ……ぁああぁあああぁ!」

やっぱり寂しいよお……。
やっぱりユイがいないと、寂しい。怖い。辛い。
ねぇ、ユイぃ……。
仲良くしたいなら、死んだらダメじゃん。死んだら仲良く出来ないじゃんかぁ……!


……涙が枯れてしまった。
今、涙が出なくなった。声も出なくなった。
リビングに無音の世界が訪れる。
いや、完全に無音ってわけじゃないと思う。
ずっと聞こえるの。耳の辺りでキイイィンっていう耳鳴りが。
しかも、どんどん耳鳴りは大きくなってるの。

中学生になってすぐ、聞いたことがある。
耳鳴りがするのは、幽霊が隣にいるからだって。

そんなの嘘だって笑い飛ばした。
けど、もしかしたら本当なのあもしれない。
ユイが私の隣にいるのかもしれない。
そうであってほしいのかもしれない。


私は右隣を見た。
そこには何も居なかった。

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作者名:ムクロねこ | 作成日時:2015年8月29日 19時

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