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「お母さんには連絡しておいたわ。30分待てば来るはずよ」
「……はい」

保健室の先生__洋子先生__が私の前の椅子に座った。
洋子先生は美人で人当たりも良く、これぞ保健室の先生!って感じの人だ。
結婚しているそうで、保育園に子供を二人預けている身だそうだ。

先生は「大変だったわね」と言った。
私は静かに頷いた。

「ユイちゃん……昨日は元気だったのにねぇ」
「そうですね……」
「あの子は明るくて、たまに保健室に来ては自慢ばかりしていたのよ。たくさん友達がいて、今日遊びに行くんだとか」

ここは保健室だが、怪我人や病人以外にも、たくさんの人が保健室に足を運ぶ。
やはり、洋子先生の人柄のおかげだろう。
とても入りやすく、話やすく、雑談しやすく……。私もたまに、クラスのことで相談しに来ていた。
けれど、その度洋子先生に「でもね……」と訂正されていた。

「……不思議なものよね。昨日まで一緒にいた子が、もう会えなくなるんですもの」

先生は時計をチラリと見た。

「そうね。まだ時間もあるし、ちょっとお話しましょう」
「……お話ですか?」
「そうよぉ。あなたのクラスの愚痴、聞かせてくれてもいいわよ?」
「あ、ハイ。えっと、じゃあ……」

それから私は少しずつ愚痴っていった。
誰々が煩いだの、誰々がウザイだの、誰々が幼稚だの。
けれど、洋子先生は「でもあの子は……」と私の言葉を訂正していった。

「まったく。あなたは変わらないわねえ」
「……変わらない?」
「えぇ。最後に来たときと、まんま変わらないわ」
「えぇっ……そんなぁ……」
「変わらないのは時には良いことでもあるのよ」

変わらない、ね。

ユイは、あのまま変わらなければ、いつも通り私の隣にいたのかな。

「変わらないね。ユイちゃんは変わってたわね、昨日。元気なのは同じだったのだけれど」

私はその時、背中に冷や汗をかいた。
やってしまった……。
洋子先生のペースにのせられてしまった。

「ねぇ?昨日、私が居ない間に何があったのかしら?」

うぁ……。
どうしよ。どうしよ。
全て話すことになってしまう。きっと、洋子先生は私を批判する。

やだ。言いたくない。

「ほら、まだまだ時間はあるわよ」
「うぁ……うぁ……」
「うぁ、じゃあ分からないわ」
「で、でも、その、あの、あの、あの、あの、えっと……」

私は狼狽えた。
洋子先生が私を見てニコッと笑顔になった。怖かった。

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作者名:ムクロねこ | 作成日時:2015年8月29日 19時

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