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休み時間になっても、ノアは戻って来なかった。
「どうしたんだろうね、ノア」
「……知らないよ、そんなの……」
今日は珍しく、私がユイの席に行った。
ユイは、なんだか気を落としていた。
話しかけてもいつもより低い声でしか返してくれないし。
やっぱり心配だよ……。
「ね、ねぇ、A」
ユイが顔を伏せながら言った。
髪が前に下がって、カーテンのようにユイの顔を隠す。
そのせいで表情が分からない。
「わわわ、私、もう、あ、あの、帰り……たい……」
「……えっ!?」
ユイが!?
ユイには「学校大好き!!」って言ってるような印象を持っていた。
だから、ものすごく驚いた。
それに、言葉も辿々しいし、まだノアたちに怯えているようだった。
もう「さん」付けはしないけど、里子とさおりは二人して教室の隅の方で固まってるから、今は二人に何かされるということはないだろうけど……。
やっぱり、怖いんだね、ユイは。
「ユイは、もっと強いかと思ってたよ」
思っていたことを言う。
すると、ユイが「違うもん」と言った。
「私、弱くないもん。違うの。違うの。違う違う違う!!」
いきなり大きな声を出して立ち上がる。
やけにユイの声が教室中に響いたように思えた。いや、実際そうなのかも。教室にいる人達全員がこっちを見てるから。
皆、「またかよ」って顔をしてる。
里子とさおりは悲しそうな顔をしている。
そして私は、ただただ驚いていた。
「違うよ!!違う、違う!!私は違う!!」
「……あ、ユ、ユイ？」
「Aは本当に私の友達!?」
「……え？」
「どうせ、皆と同じように猫かぶりって思ってるんでしょ!?」
ー･･･この猫かぶりめが!!･･･ー
ユイに言ったノアの言葉が頭に響く。
どういうこと？
どうしてこんな短時間でユイは変わっちゃったの？ねぇ、ねぇ、ユイ？
私も可笑しくなっちゃうよ!
辛くて可笑しくなっちゃうよ!
「そうだよ!どうせ猫かぶりだもん!いっつもそうやって生きてきたもん!」
「ユイ……」
「そうじゃないと生きていけないから!中学になって変えたの!変わったの!」
……え？変えた？
それって、キャラを変えたってことだよね？中学に入ってから。
確か、ノアとユイはもともと同じ学校だったから、ノアがキャラを変える前のユイを知っていても可笑しくない。
そして、ユイのキャラが変わるのを見て、猫かぶりと勘違いしても何にも可笑しくない。
もしかしたら、そのことを言って……＿＿。
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作者名：ムクロねこ | 作成日時：2015年7月6日 0時
