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私は固まった。困惑した。
これまでにないほど困惑した。

半分の生徒がノアにいじめられたことがある?
何それ。ありえないでしょ。
多くても十数人くらいでしょ。なのに、なんでそんなにも多くの子たちが……!?

ナナちゃん、あなたも可笑しくなっちゃったの?
可笑しいよ。可笑しい。凄く可笑しい。そんなに大勢の人がいじめられるわけないでしょう?

「それに、ここにいるサトル以外はいじめられてた!!ノアに!!」

もう、ナナちゃんはノアを「ちゃん」付けしていなかった。
憎しみの籠った目で、床を見ている。
そして、床を力いっぱいに踏んづけ始めた。

ドンッドンッと音がなる。

私は分かってしまった。ナナちゃんは、床をノアに例えて踏んづけているのだと。

それに、「ここにいるサトル以外はいじめられた」という言葉。
これは、ナナちゃんもノアに「いじめられた」ということを表している。
同時に、瑠璃ちゃんや花ちゃん、達也君も「いじめられていた」というのも表していた。

「ノアはいらない!ノアはいらない!あんなやつ、存在しなければ皆、皆幸せだったわよ!!」
「ナナ、お着いてよ!!」

瑠璃ちゃんがナナちゃんの肩に手を置いて、ナナちゃんに負けないくらい大きな声で言った。

「ここが人気のないところだからまだ良いけど、ノアちゃんがあなたの声を聞いてここに来たらどうするのっ?」

すると、ナナちゃんが黙って、床を踏んづけるのもやめて言った。
「ごめん」と。

私はナナちゃんを責めたりしなかった。
ナナちゃんの気持ちは分かる。痛いほど分かる。
私は、生徒指導室でノアを蹴ったりするのを想像して楽しむくらいにノアを憎んでいた。
私の友達をあんな目に合わせて……!
それで逆に自分が被害者だと言うように!!あんな風に言いやがって!!

「Aちゃんも落ち着いて。……もう時間だよ。そろそろ教室に戻ろう?」

瑠璃ちゃんに宥められて、私はようやく落ち着いた。
私も「ごめん」と言った。

「いいよ、別に。ささ、戻ろっか」
『うん』

皆で声を揃えて肯定する。

私達は教室に戻るため、一歩を踏み出した。そして、すぐに休み時間終了を知らせるチャイムがなった。

「うおっ!?い、急げええええぇ!!」
「ちょ、達也うっさいぃ!!」
「瑠璃もうっせえ!!」

……ホント。この二人には和まされるばっかだなあ。

一年のころの私を思い出して、ちょっと懐かしくなった。

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作者名:ムクロねこ | 作成日時:2015年7月6日 0時

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