幸せ4個目 ページ4
*
暗い部屋。
豆電球は切って寝るタイプの寧人に合わせて今夜部屋を照らすのは月と星の光だけ。
年頃の男女が同じ部屋でいいのかだって？
気にすることは無いさ、彼はそんな気にはならない。
｢寝たか。｣
｢起きている。どうした？人形劇でもしてやろうか。｣
口を開けば煽ってしまうのはご愛嬌。
許されると知っているし、彼も中々に言う方だから構わないだろう。
｢A、体育祭で戦おう。｣
｢ん〜？断ったはずだけどなぁ？寧人くんは耳が悪い？｣
誤魔化すな、と一声。
なんだよなんだい、今日はノリが悪いな。
｢寧人は私に何を望む？｣
声のトーンを落とす。雰囲気作りは大事だろう？
こう……如何にも意味深な話してます感を出すのに重要な演出だよ。
現実世界じゃあ、時を止めて光を当てて、本心を晒すことなんて出来ないんだから。
｢……幸福を。｣
｢んふふ、寧人は馬鹿だなぁ。｣
こうして話しているだけで、私は幸せだと言うのに。
｢まあいい。本当に君が望むのなら、体育祭で目立つことも視野に入れておこう。｣
本当は嫌だけど。だって私は
舞台の主役は私じゃない。
舞台において、演劇において、中の人が見えてくる演技なんて3流以下。金を出す価値もない。
観せるなら取り込まなければ。
まるで世界に飲み込まれたように、客に魅せなければ。
｢君はバックステージが好きな人間なのかな。｣
｢……なぁんの話だよ。｣
眠そうに間延びした声と、布の擦れる音が聞こえた。
声の飛び方からしてこちら側へ寝返りをうったらしい。
｢さて、なんの話だろう。｣
｢…ん〜、難しい……。｣
おや、会話になっていない。
寝落ちるだろうからもう返事の必要は無いかな。
｢……体育祭ねぇ。｣
きっとここが分岐点だろう。
頑張ればどうなる？上手く行けばヒーロー科へ転科して、幼い自分が憧れたヒーローになれるとでも言うのか。
頑張らなければきっと適当に日々は進んでいく。
寧人はきっとヒーローになって、1番とは謳われずとも名声を手に入れる。
彼にはその力と、熱量があるのだから当然だ。
｢寧人、寧人。夢を壊した君が言うのか。ねぇ、寧人。｣
壊れたゲームのNPCのように繰り返し名前を呼んでみる。
反応はない。当然か。眠っているものね。
自分だけいい夢を見て、未来を見て、幸せになって。
｢それでいいんだよ、それがいいんだよ。｣
だからもう、夢を見せるのはやめてくれ。
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ふわ(プロフ) - いゆ。さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです！更新も話の進みもゆっくりにはなりますが、また見ていただけると幸いです……！ (2019年4月1日 14時) (
レス) id: fce397dad0 (このIDを非表示/違反報告)
いゆ。(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです！！物間くんも心躁くんも好きな私にとってはすごく好みな作品です…！更新頑張ってくださいね！ (2019年3月28日 18時) (レス) id: ee86b7a9ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ふわ | 作成日時：2019年2月9日 2時
