難病 ページ1
お前は今日もいる。
俺は難病と診断された。
もう治らないらしい。
お前は今日も俺に見舞いに来ている。
俺はもう治らないのに。
ただただ、にこにこしながらそこにいるだけだ。
邪魔だ、と思った。
でもそれを伝えてもお前はただにこにこしているだけだ。
その内に俺はお前を理解しようとした。
外の世界はどうなっている？
今は何が流行っているんだ？
お前は何も答えない。
ただただにこにこしているだけだ。
俺はそれでも良いと思った。
居心地が良かったからだ。
朝、目が覚めてもお前はそこにいる。
にこにこしながら俺を見つめている。
夜、消灯時間になってもお前はそこにいる。
にこにこしながら俺を見つめている。
クーラーがついても、暖房がついてもお前はそこにいる。
俺はそれでも良いと思った。
お前が笑っているなら。
お前が悲しむことの無ければ。
ある日、目が覚めるとお前は居なかった。
純白のベッドが並ぶ部屋を駆け抜けて、無機質な音を鳴らす機械の間を抜けて、俺はお前を探した。
お前は居なかった。
お前が見舞いに来ない所為で、看護師もいつもより暗かった。
少しだけ、寂しいと思った。
看護師は、泣きながら俺のベッドに花瓶を置いた。
これでは俺が死んだみたいじゃないか。
あいつが見舞いに来なくなっただけで、何で俺が死んだ扱いを受けるんだ？
酷く憤慨した。
病院内で興味もない誰かの葬儀が執り行われていた。
みんな一様に涙を零していた。
そこには にこにこ笑っているお前の写真が置いてあった。
すると誰かが俺の肩を優しく叩いた。
振り返るとお前がいた。
お前は、ゆっくりと言った。
早く、お迎えを受け入れよう
ああ
見舞っていたのは
俺だったのか
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作者名：あまり。 | 作成日時：2018年3月25日 12時
