あの日、未来のトリプルフェイスを拾った。【名探偵コナン】

時間軸把握 ページ8

それから二、三日ほどでアメリカを発つ準備が整えられた。ＦＢＩの行動力はすごい。思い立ったら即行動、のような信条でもあるのだろうか。

あたしは今、ホテルの部屋で赤井さんにいくつか情報を提供している。と言ってもあの組織が謎すぎてわかることなんて限られているから、本当に基本の情報を。

あちらもとうに知っているような情報だろうに、赤井さんは最後までしっかり聞いてくれた。この人はこういうところが魅力なんだと思う。まっすぐこちらを見つめて、最後まで話を聞いてくれる。怖いとかいう人もいるだろうけど、あたしはそうは思わないな。



「あと、ベルモット。クリス・ヴィンヤードですが、母親のシャロンと一緒に調べるとおもしろいことがわかるかもしれません」

「ホー……わかった。協力感謝する。明日には発つからしっかり休んでおけ」



最後にぽんぽんと頭を撫でられ、この人はナチュラルに子供扱いしてくるな……と不満に思う。あたしは二十五なのに。日本人が童顔ぎみな民族だとはいえ、彼も日本の血が入っているのだからある程度の年齢はわかるだろう。

子供扱い、というより……妹？

そう考えた瞬間、今までの行動はすべて妹に対するものだったように思えた。銃を突きつけたのと手の甲へのキスは例外だけど、それ以外は妹をかわいがる兄の行動だったような。あたしも妹がいるからわかる。

そう考えていたら微妙な表情になり、くつろぎ始めた赤井さんにそれを指摘された。



「なんだ、その顔は」

「赤井さん、あたしを妹か何かと勘違いしてないかなって思って。アメリカ人はみんなそんな距離感なんですか」

「いや、アメリカ人もスキンシップは親しい人にしかしない」

「あたしたち親しくありませんが」

「親しくなかったのか？ 寂しいな、俺は仲良くなったと思ったのに」



いや知らねえ……。その顔絶対『寂しい』って顔じゃないだろ。この人は冗談がすごくわかりにくいから付き合いにくい。真面目な顔で嘘吐かれたら信じる気がする。

ここ三日ほどですっかり慣れた赤井さんの冗談を躱しつつ、「これは情報提供ってわけじゃないんですが」と前置きをして話を変えた。



「水無怜奈はご存知ですか？」

「ああ、キールか。赤井秀一はそいつに殺されたんだ」



…………え？

待って。それって、赤と黒のクラッシュ終わってるってことですか？？？

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