車内で ページ35
とにかくAは連れて帰りますから、という零くんの言葉に、赤井さんはもう突っかかっていかなかった。もう充分に楽しんだのだろう。だってほら、顔がつやつやになってる。日頃のストレス発散にでもなったのかな、いつもお疲れさまです。
零くんは片方の手で荷物を持つ。あたしが両手で抱えてたような荷物なのに、零くんすげえな……と思っていたら、もう一方の手で指を絡めとられる。?! ……む、昔はただ手をつなぐだけだったのに……大人になってる……?!
「それでは。悪かったねコナンくん、楽しい夕食の時間を邪魔して」
「別ニ気ニシテナイヨー」
「そうかい。あと連絡はもっと早めにするように。蘭姉ちゃんが怒っていたよ」
コナンくんは電話したときすでにこってり絞られていたようだ。それでも怒っていたということは、帰ってからもお説教が待っているかもしれないということ。硬直するコナンくんに同情し、どうか彼が生き延びますようにと両手を合わせる。
蘭ちゃんは優しいし大丈夫だろうとは思うものの、夕飯はいらないとギリギリになって伝えた挙句、帰りが遅かったら天使の蘭ちゃんも叱らずにはいられないだろう。せめて彼の罪が軽くなるようにと声をかけた。
「コナンくんも早く帰るんだよー」
「毛利探偵事務所まで送っていこうか?」
「ううん、大丈夫。昴さんに送ってもらうから。ありがとうAさん、安室さん」
それに二人の邪魔しちゃ悪いしね、と付け足したコナンくんに、零くんがお気遣いありがとうと返した。普通はそんなことないよと言うべきじゃないか? でも人の厚意には甘えろとも言うし……見た目小学生の厚意に甘える二十九。
「やたら日本に来たがっていたのは彼がいるから……絶対に味方だと言い切れないのは彼の味方だから……日本に着けば信じられるのもこっち側の彼がいるから……ホー、相思相愛か……」
内容は聞き取れないが、ぶつぶつ何かを呟いている赤井さんを一睨みし、零くんはあたしの手を引いて工藤邸から出る。玄関まで見送りに来てくれた二人に「お邪魔しました」と言って、零くんにエスコートされて表に停まっている黒い車の後部座席に乗り込んだ。運転席には誰かがいる。零くんの部下かなぁ……。
零くんがトランクに荷物を入れ、己もあたしの隣に乗る。すぐさま発進した車に揺られ、五分ほど沈黙が流れた。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時