ハムサンド ページ24
向かいに座るコナンくんが呆れたように笑う。よくある「ハハ……」ってやつだ。生で見られてうれしい気持ちと、そんな顔をさせてしまって申し訳ない気持ちもある。
原因はすべてあたしの隣に座る彼にある。流れるような動きであたしの隣に座った彼は、頬杖をついてボーっとあたしの顔を眺めている。何が楽しいんだかわからないが、何よりも顔を見られている恥ずかしさが勝り、あたしはメニュー表で顔を隠した。
「急にどうしたんですか、A?」
「透くんがあたしのことずっと見てるからでしょ……!」
「まあいいじゃないですか、減るもんじゃないし」
「恥ずかしいからやだ」
にこやかにメニュー表をどかそうとする零くんと、何とかして顔を隠したいあたし。さっきもこんなやり取りをしたような?
コナンくんはそんなあたしたちのやり取りに呆れているのである。気持ちは大いにわかる。もし赤井さんとジョディさんがしていたら、あたしも心から呆れるだろう。
零くんが始めて続けて終わらせないんだから、零くんが悪いだろ。と、現実逃避を兼ねた責任転嫁が始まったところで、コナンくんが助け舟を出してくれた。
「そうだ! Aお姉さん、ハムサンドは?」
「そう、そうだよコナンくん! 店員さん、ハムサンドくださいっ」
「かしこまりました、あなたのために愛情をたっぷり込めておつくりしますね♡ コナンくんも食べるかい?」
「ううん、ボクはもうお腹いっぱいだから……」
そう言いながらちらりとこちらを見るコナンくん。なんだ、お腹いっぱいなのはあたしのせいだってか? いやあたしは悪くないでしょ、甘い雰囲気に持っていこうとするのは零くんなんだから。
零くんが上機嫌に去ったのを確認して、コナンくんはげんなりした顔で脱力した。いやはや、お疲れさまです……半分くらい、ううん三割くらいはあたしのせいなので、ごめんねの意味を込めて頭をなでなでする。
コナンくんはしばらくされるがままになっていたが、びくっと身体を震わせてカウンターを見たかと思うと、慌ててあたしの手を跳ね除けた。……悲しいな、オイ。早くも嫌われたか?
悲しい気持ちで跳ね除けられた手を見つめていると、コナンくんが上擦った声で「は、恥ずかしいから!」と叫んだ。
カウンターを見る。零くんと目が合う。彼は無駄にうまい口笛を吹いた。こいつ……。
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時