あの日、未来のトリプルフェイスを拾った。【名探偵コナン】

戻れたとしても ページ49

ある日、未来のトリプルフェイスを拾った。



彼は最初、とっても不愛想で、全く笑わなくて、甘えるのも下手くそで、ぶっちゃけ顔しかかわいくなかったなあ。

今思えばあれもあれでかわいかったと思うけれど、あのときは「不愛想だなー」なんて思って見ていた。彼もそれに気づいていたと思う。

でもだんだんと、慣れていくうちに笑うようになってきて、しゃべるようにもなってきて、自分から甘えるのは相変わらず下手くそだったけれど、あたしのほうから甘やかすと素直に甘えるようになった。

彼はあたしが何かしてあげる度に喜んで、「ありがとう」といちいち言う。

ロケットペンダントをあげたときなんて、なぜか泣いて、喜んで、初めてあたしとぎゅってした。ずっと大事にすると約束してくれて、本当にずっと、大事に持っていてくれた。ふふ、彼のことだから、今も着けているんだろうな。

あたしは彼がかわいくて仕方がなくて、彼の望みはなんでも叶えてやりたくて。

あんなに嫌だった同窓会も、彼が行けと言うから参加した。結局同窓会は最悪で、泣きながら帰ったら彼は外でずっと待ってくれていた。お互い何も言わなかったけれど、彼も不安だったんだろうなあと今は思う。



かわいいかわいいと思っていたら、彼は急に頼もしく見えたり、かっこよく見えたり。そのギャップにドキドキしてたなぁ……十一才も離れていたけれど、彼はあまりにも魅力的だった。

あたしは彼が大好きで、彼がいないとダメダメで、彼がいなくなってからも、彼にはあたしが必要だって信じて疑わなかった。…………疑わなかったは嘘かも。信じたかった。

父に背中を押してもらって、彼に会いに行く決心をした。



でもそれは、彼を手に入れる代わりに、他のすべてを捨てなくちゃならない決断だった。







あの日、彼を拾わなかったら。



あたしは、大切な家族も、気の置けない友人たちも、尊敬している師匠も、失ってはいなかっただろう。

あっちの世界で今まで通り生活をしているんじゃないかな。それはそれで楽しそうだし、彼を拾う前も楽しかったわけだから、きっとそれでも充実していた。

何より大好きな人たちに囲まれて、いつか素敵な恋をして、幸せな日々を過ごす。そんな人生を歩んでいただろう。



もし、あの日に戻れるとしたら。





それでもあたしは、きっと＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿。

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