共に死ぬ覚悟 ページ37
風見さんにされた「お付き合いされているんですか?」の誤解を解いたり、うっかり口に出してしまった沖矢昴の名で不機嫌になった零くんを宥めたりしていたら、零くんの家に着くのはあっという間だった。風見さんにお礼を言って別れ、零くんのお家に入る。
零くんのお家は「MAISON MOKUBA」なるセキュリティのしっかりしていそうなマンションの一室だ。部屋では白い犬が一匹待っていて、最初は吠えられまくったが、基本的に人懐こい犬らしく、数分戯れていると懐いてくれた。
零くんのリクエストに応え、スパゲティグラタンをつくる。彼は家にある食材をきちんと把握していて、そろっていることがわかっていたからリクエストしたそうだ。抜け目ない。
「偶然食材がそろっていたし、Aと初めてちゃんと喋れた日の夕飯だったからな」
「……そういえば、そうだったような。よく覚えてるね、あたしと違って十五年経ったのに」
「ずっと忘れられなかったよ」
零くんが肩を竦める。彼の記憶力の高さは人間を超えている。しかも、ただ記憶力がいいだけでなく、頭がいいのだ。もう同じ人間には思えなくて、別の生き物なんじゃないかと思えてくるが、こちらの世界には彼と同じくらい頭のいい人があと数人存在する。全員人間である。
あたしがホワイトソースとミートソースをつくっている間に、零くんがスープとサラダをつくる。あのころとは違い、分担して作業ができる。それは本当にうれしく思うが、あたしが零くんにしてあげられることが少なくなったことは寂しく思う。してあげられること……もうないのでは……?
ハイスペックだとこういうとき困るな。彼がなんでもできてしまうから、あたしにできる数少ないことをしてあげられなくなる。逆にダメ男だったらなんでもしてあげられるのに。極端な話だが。
「やっぱり美味しいな、Aの料理は。久しぶりに食べた」
「さっきカレー食べたじゃん」
「あれはナシ。沖矢昴のためにつくった料理だろ」
「あたしは手伝っただけだけどね」
二人で舌鼓を打つ。やっぱり零くんは褒めてくれた。
実際はかなり手を出してしまったが、ここは赤井さんを立てておく。たぶん赤井さんが一人でつくっててもかなり美味しかっただろうし、あたしがいようがいなかろうが何も変わらなかった。変わるのはコナンくんが食べるか食べないかくらい?
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えりんぎ苺(プロフ) - よるさん» レス遅れて申し訳ありません、気づきませんでした……! 主人公をできるだけフツーの女の子にしたかったので、それが伝わって嬉しいです。十四才零くんとのやり取り書き足りないんですよね(笑) 完結させて頂きありがとうございます。コメントありがとうございました! (2020年6月14日 18時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ちょっと文字数が足りなかったので…完結お疲れ様でした! (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
よる - めっちゃ面白かったです!とくに主人公が凄く個性が強いわけでもなく、普通の人って感じがしてとても共感するし、読みやすかったです!(語彙力少なめなので伝わってると嬉しいです) 14歳の零くんと主人公のやりとりが鮮明にわかり微笑ましい気持ちになりました笑 (2020年6月5日 1時) (レス) id: e10e6d9ba2 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ゆるり。さん» 寂しく思ってくださるなんて……! 繊細で優しい書き方だなんて初めて言われました。すごく嬉しいです。こちらこそご愛読いただきありがとうございました。ぜひぜひ次もお付き合いください。コメントありがとうございました! (2020年5月31日 8時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり。(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品が更新されるのが楽しみで楽しみで、完結してしまったのが寂しいくらいです…。繊細で優しい書き方で、とてもわくわくしました。素敵な作品をありがとうございました!次も付いていきます! (2020年5月31日 7時) (レス) id: f1881e43ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月25日 21時