すべては彼に会うために ページ50
ジョディさんと赤井さんにも名前を教えてもらい、堂々と口に出して呼べることに歓喜しながら、表面上は『突然知らない場所にいて困っている女性』を装う。
先ほどどこかに行ったと思えばすぐにノートパソコンを持ってきた赤井さんが、キーボードを叩く手をようやく止めると、静かに首を振った。
「ダメだな。どこの国にも松七五三Aという人間は存在しない」
「そんな! 珍しい苗字だからすぐ見つかると思ったのに……!」
「……彼女が嘘を吐いていなければな」
「嘘なんて吐いてません!」
これは本当だ。あたしは確かに松七五三Aなんだから。
こちらの世界にあたしの戸籍がないということは、あちらの世界に零くんの戸籍もなかったってことだ。学校通わせなくてよかったと今更ながらほっとする。
あたしが零くんを思い出している間に、二人の間で話が進んでしまっていた。証人保護プログラムだとか偽造戸籍だとかの単語が聞こえてきて、慌てて会話に参加する。
「いや、あたしは日本に帰れればそれでいいんですけど……」
「いいわけないでしょ! 戸籍がなくてどうやって生きていくのよ!」
「そう熱くなるな、ジョディ。悪いがA、こちらとしても君をすぐ日本に帰すわけにはいかないんだ。戸籍がないと裏社会のやつらに狙われかねない」
「ええー……」
「シュウの言う通りよ。A、しばらくはアメリカにいるべきだわ」
困ったことになった。これじゃ零くんに会いに行くのに何年かかることか。
というか、アメリカにいたって危険なのは変わらなくないか? 黒ずくめの組織に限らず、違法組織なんてアメリカでだって活動してるんだから。そう考えると日本は平和なほうだぞ……。
「え?」
「A。……君はやつらのことを知っているのか?」
声に出てた。
……えー、知ってると言っちゃ知ってるけど別に関わりがあるわけじゃないんだよな! 変に疑われるのは嫌だなあ、あたしは零くんに会いたいだけなのに!
………………しかたない。腹をくくるか。
「取引をしませんか。あたしと、あなたで」
ここで上手く取り繕えば直接零くんに会えるルート。失敗すれば頭と身体がバイバイするルート。
危険な道だけど、この際なんだっていい。零くんにつながる道ならば。
さあ、
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えりんぎ苺(プロフ) - バッグ・クロージャーさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです……! 楽しみにしていただいているので、更新頑張らなくっちゃですね。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - ひかりさん» 面白いと言っていただけて嬉しいです。すぐに反応していただけるとは……わたしは幸せ者ですね! 更新頑張ります。コメントありがとうございました! (2020年5月25日 16時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
バッグ・クロージャー(プロフ) - すっごく面白かったです!更新楽しみにしてます! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 09ffad4c5f (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - めちゃ面白いです!さっき更新された話もまじ良かったです! 更新待ってますっ!! (2020年5月25日 16時) (レス) id: 2b9098a683 (このIDを非表示/違反報告)
えりんぎ苺(プロフ) - サクラさん» 面白いだなんて、すっごく嬉しいです! 零くん視点の予定はなかったのですが、もしお待ちいただけるのなら、完結後に番外編として書かせていただきたいのですが、よろしいでしょうか? コメントありがとうございました! (2020年5月25日 13時) (レス) id: b6e0dc5b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えりんぎ苺 | 作成日時:2020年5月21日 19時